タイトル | タイに自生するエリアンサス遺伝資源の多回株出し栽培における農業形質情報 |
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担当機関 | (国)国際農林水産業研究センター |
研究期間 | 2011~2017 |
研究担当者 |
寺島 義文 杉本 明 高木 洋子 PONRAGDEE Werapon SANSAYAWICHAI Taksina TIPPAYAWAT Amarawan CHANACHAI Sangdaun 蝦名 真澄 林 久喜 |
発行年度 | 2021 |
要約 | タイに自生するエリアンサス遺伝資源は、多回株出し栽培における農業形質に大きな遺伝的多様性を有する。多回株出し栽培での農業形質情報や生産性等が優れる育種素材は、タイにおけるサトウキビの育種やエリアンサスの新規資源作物としての育種で利用できる。 |
キーワード | 遺伝資源 エリアンサス サトウキビ 資源作物 バイオマス |
背景・ねらい | サトウキビ等で実施されている株出し栽培(地上部の茎を収穫した後に、土壌中に残る株から再生する茎を栽培して収穫する作型)は、植え付け作業が不要であるためエネルギー投入量が少なく、経営及び環境保全の面からも重要な作型である。サトウキビの近縁属遺伝資源であるエリアンサス(Erianthus spp.)は、株出し栽培を複数回繰り返す多回株出し栽培におけるバイオマス生産性が高く、干ばつ等の不良な環境への適応性に優れる。そのため、気候変動下での多回株出し栽培における生産性向上が課題となるサトウキビの育種素材やバイオマス生産に向けた新しい資源作物としての利用が期待されている。同遺伝資源の効果的な育種利用に向けて、多回株出し栽培における農業形質の遺伝的多様性に関する科学的な情報は重要であるが、世界的に報告は行われていない。本研究では、国際農研とタイ農業局コンケン畑作物研究センターがタイ各地から収集した多様なE. arundinaceusとE. procerusの遺伝資源について、効果的な育種利用の基盤となる、多回株出し栽培における農業形質の遺伝的多様性に関する情報を整備し、育種素材を選定する。 |
成果の内容・特徴 | 1. タイで収集したエリアンサス遺伝資源130系統(E. arundinaceus:98系統、E. procerus:32系統)には、多回株出し栽培におけるバイオマス生産性等に関連する農業形質に多様な遺伝的変異が存在し、サトウキビやネピアグラスより株当たり乾物重が大きい系統が存在する(図1)。 2. 株出し栽培を多数回繰り返す上で重要となる多回株出し指数(株出し3回目/株出し1回目)にも大きな多様性があり、株出し栽培を繰り返した場合でも株当たり乾物重や茎数等が低下しにくい系統が存在する(図1)。 3. 株あたり乾物重は、茎数との相関が強いが、1茎重や茎径、ブリックス(可溶性固形分濃度)との間には強い相関関係がないことから、多回株出し栽培におけるバイオマス生産性が高く、ブリックス等の各形質の特性が優れる育種素材の選定が可能である(表1)。 4. E. arundinaceusおよびE. procerus遺伝資源から選定した多回株出し栽培における株当たり乾物重や多回株出し指数等が大きい系統は、育種素材として有望である(図2)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 本研究で取得した多回株出し栽培における農業形質情報や選定した育種素材は、タイにおけるサトウキビの育種やエリアンサスの新規資源作物としての育種で利用できる。 2. 農業形質情報は、タイや世界のエリアンサス遺伝資源の利用促進に向けた基盤情報として、国際農研ホームページ(https://www.jircas.go.jp/ja/database)にてデータベースとして公開する。 3. 本研究で取得した農業形質情報は、多様な遺伝資源を複数年にわたり評価するために、コンケン畑作物研究センター内の圃場において、1区1株、3反復で評価した結果であることに留意が必要である。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
研究内容 | https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2021_c01 |
カテゴリ | 育種 遺伝資源 経営管理 さとうきび データベース |