タイトル | 伊勢湾における夏季のシラス漁場形成と渥美外海で発生する湧昇の関係について |
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担当機関 | (国研) 水産研究・教育機構 愛知県水産試験場 漁業生産研究所 |
研究期間 | 2001~2021 |
研究担当者 |
中野哲規 植村宗彦 |
発行年度 | 2021 |
要約 | 2020年夏季のシラス漁は、8月に顕著な好漁となった(図1)。観測結果を元に、渥美外海から伊勢湾にかけての垂直断面図を作成して検討した結果、外海の底層にある栄養豊富な底層水が湧昇し、湾口部で混合しながら伊勢湾の中層へ侵入したことで、伊勢湾の栄養条件が改善され、餌料環境が好転した結果と推測された(図5)。今回の現象は、湾内の基礎生産力を評価する上で重要な現象であると考えられた。 |
背景・ねらい | 2020年夏季のシラス漁は、過去10年と比較して7月は平年並み、8月が高水準の漁獲量となった(図1)。8月の漁場は伊勢湾南部から湾口部にかけて形成されていた(図2)。卵の採集数は、過去10年と比較して6~8月にかけて高水準であったことから、伊勢湾の海洋環境がシラスの生残に何らかの影響を与えて、漁模様が好転した可能性がある。このため、7月と8月における渥美外海から伊勢湾にかけての海洋構造を解析、比較し、シラスの漁場形成に重要な餌料の指標となるクロロフィルa濃度の分布について検討した。 |
成果の内容・特徴 | ・伊勢湾から渥美外海にかけての密度の鉛直断面図をみると、7月は降雨の影響による成層構造が発達し、クロロフィルa濃度の分布は表層が中心であった。一方、8月は渥美外海において湧昇が発生し、渥美外海の湾口部の底層から中層にかけてクロロフィルa濃度が増加し、伊勢湾においても中層付近にクロロフィルa濃度の高い層が観測された(図5)。 ・海洋構造を鉛直断面図やTSダイヤグラムから解析した結果、渥美外海で湧昇が発生すると、この水塊が伊勢湾の中層付近へ侵入し、その水塊の分布と重なるようにクロロフィルa濃度が高い層が形成されていた。 ・今回の解析結果から、渥美外海で湧昇が発生すると、底層にある栄養豊富な水塊が伊勢湾内へ供給されるため、湾口部や伊勢湾のクロロフィルa濃度が増加し、シラス類などの餌料環境が好転すると考えられた。 |
成果の活用面・留意点 | 伊勢湾における生産力を考える上で、渥美外海で発生する湧昇による底層からの栄養分供給は重要であり、夏季の伊勢湾内における生産性に大きく関与していることが示唆された。 今回の湧昇は、黒潮の流路がAs型(A型流路であった、遠州灘沿岸部を通過する)で発生していた。湧昇の発生条件については、風などの気象条件なども複雑に影響すると考えられることから、今後も継続的に調査を行い、発生事例を増やして検討をすすめていきたい。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
図表5 | |
研究内容 | https://fra-seika.fra.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=11080&YEAR=2021 |
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