カワウ卵の発生を阻害するための液剤種類と効果的な使用方法

タイトル カワウ卵の発生を阻害するための液剤種類と効果的な使用方法
担当機関 (国研) 水産研究・教育機構 岐阜県水産研究所
研究期間 2017~2019
研究担当者 徳原哲也
後藤功一
発行年度 2021
要約 営巣中のカワウ卵のふ化阻害を目的に、効果的なオイリング用液剤の選定および高所への噴霧方法について検討した。鶏卵受精卵に、流動パラフィン(食品添加物規格)を噴霧したところ、卵の発生段階に係らず効果があることを確認した。さらに、大型ドローンによる実証試験では、噴霧時の風速が結果を左右するが、高所あるいは遠距離にある巣に対して、安全に作業できることを確認した。
背景・ねらい 銃器に頼らない有害鳥類の個体数抑制方法として、卵に塗布した液剤により、卵表面の気孔を長時間閉塞させ卵を窒息させるオイリングという方法がある。しかし、カワウは外敵から卵や雛を守るため、高木の上層付近等に営巣することが一般的であり、人が巣に近づくには危険を伴う場合が多い。このオイリングの液剤を遠隔操作型マルチコプターから噴霧できれば、高木に営巣するカワウに対しても効率的な対策が可能となる。一般的に卵発生阻害に使用されている石鹸水は水溶性であり、降雨等により、効果が損なわれる可能性が高い。そこで、ベビーオイルの主成分である流動パラフィンと石鹸水の2種類について、飛行するドローンから噴霧することを前提条件に、液剤の能力差や噴霧条件等について調査した。また、実際に農薬散布用ドローン(延長噴霧用ノズルを増設)から液剤を噴霧する場合の課題等について検討した。
成果の内容・特徴 一般的に使用される石鹸は水溶性であり、鶏卵の初期発生時に噴霧した場合、高温多湿な環境下(親鳥による抱卵状態)では、窒息する前に石鹸の被膜が溶け、効果が維持できない可能性が高い(表1)。そこで、石鹸水に替わる液剤として、流動パラフィン(食品添加物規格合格品)を検討したところ、水に不溶であり、粘度は高いが硬化しにくいため、鶏卵の発生段階に係らず、窒息に必要な時間まで卵表面の被膜を維持できることが分かった(表1)。

 なお、流動パラフィンを手動式噴霧器から鶏受精卵に噴霧した場合、噴霧時間が3秒間であっても、噴霧後4分以上親鳥に抱卵させなければ卵の生残率を10%以下に低減できた(図1、2)。実際に、湖面上に突き出した立木に形成されたカワウの集団営巣地4区画において、大型ドローンに搭載した噴霧装置および手動式噴霧装置から、流動パラフィンを営巣中のカワウ卵に噴霧した結果、手動式で噴霧した2区画ともに100%、ドローンからの噴霧では1区画で67%(噴霧時は風速5m/秒以上)、他1区画では96%(噴霧時は風速1m/秒以下)のふ化阻害効果を確認した(表2)。
成果の活用面・留意点 流動パラフィンは硬化しにくいため、噴霧器のノズルが詰まりにくい。また、食品添加物規格合格品を用いれば、カワウ以外の生物や環境への影響をより少なくできる。

 ドローンから噴霧する場合、噴霧機能、液剤の積載量、飛行時間、安全性等を考慮すると、農薬散布用の大型ドローンの使用が望ましく、さらに巣内の卵への噴霧状況を確認できるカメラの増設が必要である。なお、ドローンから噴霧する場合、風の弱い条件下(風速1m/秒程度以下)で行う必要がある。
図表1 249211-1.png
図表2 249211-2.png
図表3 249211-3.png
図表4 249211-4.png
研究内容 https://fra-seika.fra.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=11048&YEAR=2021
カテゴリ 遠隔操作 ドローン 農薬 マルチコプター

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