【環境保全型家畜ふん尿循環利用システム実証事業】III畑酪地帯におけるセミソリッドふん尿の効率的循環利用システムの現地実証3. セミソリッドふん尿循環システムの現地実証

• 研究機関名: 北海道立畜産試験場
• 研究分担: 環境草地部畜産環境科; 畜試・十勝農試技術体系化チーム; 根釧農試研究部酪農施設科
• 研究期間: H16～18
• 年度: 2004
• 摘要: 目的：畑酪地帯においてセミソリッド状の酪農ふん尿を固液分離し、固形分を良質堆肥、液分を速効性肥料として、効率的に利用するシステムを構築することを大目標とする。本中課題では、別課題で開発される移動式固液分離技術および分離液施用技術を現地実証調査をおこない、システムを導入条件および地域に導入することによるコスト・環境保全効果を提示することを目的とする。方法：1) 移動式固液分離機および分離液施用の現地適応性(1)移動式固液分離機の現地適応: 試作した可搬式離機を現地酪農家に設置し、麦稈混じりセミソリッドふん尿をショベルで分離機に投入して(写真1)、作業上の課題を検討した。(2)分離液の草地・畑作における現地施用試験:分離液を畑作農家のエン麦および秋播き小麦圃場の耕起時に施用し、散布時悪臭、作業時間、作物の生育経過等を調査した。2) セミソリッド循環システムの体系化(1)セミソリッドふん尿の処理・利用実態の解明:十勝管内酪農家におけるセミソリッドふん尿の処理状況の現状および畑作農家におけるふん尿利用の意向を調査した。(2)システム(想定)の体系と導入条件の検討:既存の固液分離導入農家(更別村)において、導入にともなう肥料節減効果、環境保全効果、コスト変化を調査した。成績の概要：1)-(1) フリーストール牛舎から搬出されたふん尿は、麦稈と十分に混合されておらず、固液分離機に投入する前にショベルで混合する作業が必要であった。また、試作した比較的小型の分離器においてはショベルで一度に多くのふん尿を投入すると投入部のつまりが生じた。固形分の堆肥化は良好で最高温度は60℃以上に達した。1)-(2) 分離液施用区のエン麦収量は、肥料無施用区に比べ増収し、農家慣行、化学肥料区に比べ少なかった。小麦の生育・収量については調査中。2)-(1) 十勝の畑酪地域の4町において、フリーストール酪農家140戸のうち、スラリー処理主体と確認出来たのは20戸程度であり、残りの大半がセミソリッドまたは高水分ソリッド処理と考えられた。セミソリッド処理農家12戸の経営面積当たり飼育頭数は、平均成換3.3頭/haであり、過半数の農家で経営外へのふん尿移動が必要とされていた。一方、畑作農家でスラリー等液状厩肥を畑地に利用している農家数は少ないものの、秋まき小麦については比較的多い。また小麦後の後の緑肥作付けに対する液状厩肥施用率はより多いと推測される。2)-(2) 固液分離機の導入により、セミソリッドふん尿の圃場堆積解消、ふん尿の畑作循環の促進、分離液利用による肥料代節減の効果が認められた。一方、固液分離機を支障なく稼働させるため、冬季の凍結ふん尿の加温融解、投入ふん尿の性状改善のための敷料使用制限とパーラー排水の加水等の作業が必要となっていた。コスト面では、固液分離技術の導入にともなって固液分離器のほか貯留槽の増設等が必要であることから、固定費の増加は大きいと考えられた。ただし、コスト面は固液分離器の可搬化による効果を含め、計測した検討が必要である。調査を継続中。
• 研究対象: 共通
• 戦略: 環境
• 専門: 環境
• 部門: 共通
• カテゴリ: 肥料 えん麦 経営管理 コスト 小麦 施用技術 乳牛