課題名 | 寒締めホウレンソウの高品質安定生産技術の確立 |
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研究機関名 |
岩手県農業研究センター |
研究分担 |
産地育成 |
研究期間 | 継H16~18 |
年度 | 2004 |
摘要 | 目的:冬期に出荷規格まで生育したホウレンソウを低温にさらし、糖度やビタミン類の含量を増加させる寒締めホウレンソウ栽培は、冬期間の高栄養価野菜として消費者ニーズが高いため、市場からの安定供給の要望も強く、生産拡大が期待されている。本県では数年前より久慈地方において先駆的に取り組まれているが、西根町、遠野市などの主要な雨よけホウレンソウ産地で導入・普及拡大の方向にある。また、他県においても北東北を中心に産地化の動きが活発化してきている。しかし、秋冬期のホウレンソウの生育は地域の気象条件や気象の年次変動に大きく影響されやすく、生産量が不安定となりやすいことから、産地の気象条件に即した作型の開発・生育管理方法の確立が求められている。また、本県産寒締めホウレンソウが消費者からの高い支持と評価が得られるよう、本県独自の寒締め栄養価指標の策定と、これに基づく品質管理も緊急の課題となっている。一方、寒締め栽培の導入によるホウレンソウの周年連作が、夏作の雨よけホウレンソウの生産性や病害発生に与える影響も懸念されており、その解明を求める現場要望も強い。また、今後、夏作のハウスを効率的に利用した寒締めホウレンソウの作付推進を図るため、周年でホウレンソウを栽培する際の導入手順及び大規模経営としての個別営農条件を明らかにするとともに、産地形成のための支援策を提示する必要がある。 到達目標:ア 本県の寒締めホウレンソウの栄養価の指標が策定される。 イ ホウレンソウの周年連作が夏作の雨よけホウレンソウの生育、土壌病害の発生等に与える影響が明らかにされる。また、夏作への影響の少ない寒締めホウレンソウの栽培条件が示される。ウ寒締め栽培を取り入れたホウレンソウ周年栽培経営の成立条件を明らかにするとともに、産地形成のための支援策を提示する。 予定成果(初年目):(1)ハウス間の栄養成分の差が把握される。 (2)主要産地における寒締めホウレンソウの栽培実態が把握される。 (3)ホウレンソウの周年連作が夏作の生育や土壌病害の発生等に与える影響が把握される。 (4)大規模ホウレンソウ経営の実態が把握され、課題が提示される。 (5)寒締めホウレンソウ消費地評価が把握される。 期待効果:ア 本県における寒締めホウレンソウの栄養価の指標が確立され、商品の生産と評価が安定する。 イ ホウレンソウの周年連作が夏作に与える影響が明らかとなり、安定かつ持続的なホウレンソウ産地の維持・拡大が図られる。 ウ 大規模ホウレンソウ経営の普及に伴う農業所得の向上が図られる。エ冬期の就農機会の増大と美味しく、栄養価の高い寒締めホウレンソウの地元消費者への供給拡大が図られる。 成果:(1)外気の低温を利用して各種葉菜のビタミンや機能性成分含有量を増加させることが可能である。また、ホウレンソウやコマツナの成分含有量に対する低温の影響の大きさはビタミンC>β-カロテン=ルテイン>ビタミンEであった。(1994東北農業研究47,317-318) (2)寒締め処理による成分品質の向上は、特に水溶性成分である糖、ビタミンC及び硝酸について低温伸長性の高い品種で大きく、低温伸長性の低い品種は脂溶性ビタミン類の増加が大きかった。栽培時の温度条件や目的とする品質成分に応じ、品種の選択が必要である。(1997東北農業研究50,191-192) (3)冬期ハウス内で生産するホウレンソウの成分品質は、外気低温を利用することによって、シュウ酸を増加させることなく、大きく向上できた。外気低温処理による伸長停止を利用すれば収穫日の調整が可能である。(日本土壌肥料学会誌1995第66巻第5号564-565) (4)べたがけ下に地表面に深さ5cm、幅10cm程度の連続した溝を作るべたがけ溝底播種により、冬期無加温ハウスでコマツ ナが栽培できる。(農耕と園芸199612月号72-75) (5)ホウレンソウの後作に吸肥力が強いコマツナを無施肥で栽培することにより、ECを低下させる効果がある。(農耕と園芸199612月号72-75) (6)コマツナにおいて10月下旬から11月下旬播種作型では積算温度450~500℃で収穫となった。(2002東北農業研究55) (7)低温順化したキャベツ幼植物において、短時間の温度上昇により耐凍性が低下すること、より高い温度の方が脱順化が進みやすい。(1997園芸学会雑誌第66号別冊1356-357) (8)雨よけホウレンソウ生体中の硝酸含量は、株全体を家庭用ミキサーで磨砕し、抽出、濾過した液を小型反射式光度計(RQフレックス)を用いて簡易に測定することが出来る。(平成14年度試験研究成果岩手県(指)-21) (10)東洋系品種には萎ちょう病量的抵抗性の比較的高いものがあり、西洋系品種には弱いものが多い。(農業技術体系野菜編7基59) (11)夏作のハウス栽培後に、オータムポエムや寒締めホウレンソウを組み合わせることにより、ハウスや労働力の高度利用が図ら れ、粗収益、所得の拡大が可能である。(秋田農試,1998) (12)コマツナやナバナは冬作の経営に有利であるが、臨時雇や出稼ぎでも兼業が冬作より相対的に有利である。したがって、通年農業専業に移行するまでの誘引は働かないと思われる。(東北農試総合研究(A)第17号,2000) (13)岩手県山形村は、やませ対策としてホウレンソウの栽培面積を増加させてきたが、最近の生産は停滞状況にある。その要因は、出荷の早期化に伴う他産地との競合による市場価格の不安定増大と連作障害問題、導入農家の規模拡大が労働力面から限界に近づいていることにある。(東北農試総合研究(A)第17号,2000) (14)寒締め栽培経験女性に対するアンケートの結果、良食味や高栄養価といった品質向上をねらった技術メリットが十分認知されていないことがわかった。このことは、寒締め栽培が付加価値型の技術であり、生産者が差し迫って必要とする技術ではない点が技術の需要を消極的にする一因と考えられるので、冬作経験者を中心に導入を進めるなど、段階的な導入が必要である。(東北農試総合研究(A)第17号,2000) |
研究対象 | ホウレンソウ |
戦略 | 園芸 |
専門 | 栽培生理 |
部門 | 野菜 |
カテゴリ | 肥料 機能性成分 規模拡大 キャベツ 経営管理 こまつな 栽培条件 出荷調整 生産拡大 施肥 大規模経営 抵抗性 土壌管理技術 なばな 播種 品種 ほうれんそう 良食味 連作障害 |