摘要 |
セリシンは、カイコが吐出する絹糸を構成するタンパク質で、高い抗酸化作用や細胞増殖促進作用を持つことが報告されている。体細胞核移植胚の発生率の向上を目的として、ウシ体外受精胚の発生培地にセリシンを添加し、胚の発生成績に及ぼす効果について検討した。 と畜場より採取した卵巣から吸引採取した未成熟卵子を、5%子牛血清(以下CS)添加TCM199培地中で20~22時間成熟培養した。凍結精液を融解後、10mMテオフィリン+10μMヘパリン+B.O液を用いて精子浮遊液を作成し、成熟卵子を導入して5時間媒精した。媒精後、ピペッティングで卵丘細胞を完全に剥離した後、0.1%セリシン添加5%CS加CR1aa培地(セリシン添加区)または、%CS添加CR1aa培地(対照区)を用いて、低酸素環境下で10日間発生培養を行い、胚の発生を観察した。なお、供試したセリシンの平均分子量は約31,000であった。発生8日目の胚盤胞をプロピディウムイオダイドとヘキスト33342を用いて2重染色を行い、細胞数を計測した。発生2日目の分割率および7日目の胚盤胞発生率は両区において差はなかったが、受精後10日目における胚盤胞発生率および透明帯脱出率は、セリシン添加区が対照区に比べて有意に高かった。8日目の胚の総細胞数および内細胞塊比率は両区において差はなかった。
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