摘要 |
全自動移植機を利用した8月下旬移植-4月収穫の新作型の品種、植え付け株間を検討の結果、‘春扇’‘羽緑一本太’が適しており、植え付けセル間隔6.4cmが良いと考えられた。また、ハウスに遮光資材を外張りして育苗を行ったが、顕著な苗の徒長が認められたことから、高温期でのセル育苗技術の確立が必要であることが示唆された。なお、光質コントロールフィルムが高温期でのネギセル成型育苗の苗質に及ぼす影響を検討した結果、FR抑制資材は、夏場のセル成型育苗に有効であると考えられが、移植後の活着および初期生育などの検討を要する。露地越冬7月どり作型において、‘02-0101’は、‘長悦’に比べ品質面で優れ、抽苔の発生も少なく、‘羽緑一本太’と同様に有望であると考えられた。12月収穫の作型では、‘華青楼2号’‘夏扇4号’‘ホワイトスター’‘龍翔’が有望であった。夏ネギのでは‘ホワイトスター’,‘MSI-662’‘MSI-757’が、春ネギでは、‘春川おく太’は株間15cm・2本植えが良く、一本ネギでは‘春扇’が良いと思われた。分場で育成中の‘9401’の夏どり作型における適正は施肥量を検討の結果、窒素成分は20kg/10aで良く、病害の発生等の傷害もなかった。夏ネギ無トンネルの作型で7月後半から8月の作型でも‘9401’は利用でき、窒素成分は20kg/10aが適当と考えられた。分場で選抜した坊主不知ネギ系統‘No.3’の特性は、5月中旬以降に品質低下が少なく、太ネギが収穫でき有望。親株が抽苔していた場合、翌年に抽苔発生しやすくなるかを調査した結果、抽苔が発生しやすいことが示唆された。生産現場では、有機野菜等の差別化生産への関心が高い。そのため、発酵鶏糞と油粕のみによる有機肥料の施肥技術について検討の結果、秋冬ネギの作型で、クリムソンクローバを鋤込むことによって、地力窒素を確保した場合、有機質肥料による栽培は化学肥料区の3割程度増肥し、基肥を重点とした施肥区(基肥:BN発酵鶏糞400kg/10a、追肥:菜種油粕264kg/10a)が適当と考えられた。秋冬ネギでは、有機質肥料区は食味向上効果があると思われたが、冬ネギの作型では判然としなかった。梅雨伏せネギの減農薬体系について作型で検討した結果、有機質資材のみでネギの育苗する場合、有機培養土を用い、培養土1リットルあたりに“つややか”を20g添加し、育苗箱を置く床に200g/m2施肥する方法で実用化できると考えられた。3月中旬以降の高温期の育苗では、発芽障害が心配されるので、培養土の施肥量について再検討を要する。6月下旬から7月上旬の梅雨の時期に大苗を定植する作型における有機栽培、減農薬、無農薬栽培について、病害虫の被害程度と収量性を検討の結果、今年度は病害が無発生状況での試験となり、昨年、収穫後半に問題になったさび病の防除効果は確認出来なかった。スリップス害は、大苗定植によって、収量に及ぼす影響は見られなかった。土壌診断の第一歩として、追肥後の土壌中の硝酸の分布を調査するとともに、診断する際の土壌採取位置を検討した結果、追肥後に土寄せした部分を平らにしてから垂直に15cm採取することが土壌診断をする際の土壌の採取方法として利用できると考えられた。7月に追肥量をかえてネギを栽培し土壌の硝酸濃度とネギ生育の推移を調査の結果、7月から8月のネギの生育においては追肥量を多くしてもネギの生育に結びつかず、窒素過多は根痛みを助長することがわかった。9月に追肥量をかえてネギを栽培し土壌の硝酸濃度とネギ生育の推移を調査した結果、9月から10月は土壌中に10ppm前後しかなければネギの生育は劣ると考えられた。2月播きについて検討した結果、N4kg区で慣行区と同等の生育収量となり、窒素量6.5kg/10a削減が可能であった。3月播では、LP肥料の箱施肥は育苗の後半が高温期となるので、根への障害が生じやすく不向きであると考えられ、スーパーロングは生育障害がみられず、箱施肥の肥料として適すると考えられた。鋤込みによるネギ残渣の分解法について検討した結果、ネギ葉を鋤込んだ時、春、秋では20日~30日程度、夏では7日程度で分解される。石灰窒素や発酵菌の添加により、春、秋に7日程度分解が促進された。総合的な砂畑白ネギの連作障害回避技術として対抗作物のネコブセンチュウ抑制効果を検討した結果、‘ネマキング’‘ソイルクリーン’のセンチュウ抑制効果は高く、次作のネギ栽培に好影響を及ぼした。また、ネグサレセンチュウは、ネコブセンチュウ同様にネギの生育に悪影響を及ぼすことが示唆された。このことから対抗作物を選択する場合、両種を抑制する作用スペクトラムの広い対抗作物を用いることが有効であると考えられた。弓浜砂丘地でのネコブセンチュウによるネギの連作障害発生圃場で4カ年にわたって、作物を組み合わせた防除体系を調査した結果、薬剤防除と耕種的防除を組み合わせることにより、ネギ収量に実害がないレベルでセンチュウ密度を維持することが、安定生産として重要であると考えられる。
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