摘要 |
目的:無放牧またはチモシー基幹放牧からチモシー(以下TYとする)及びメドウフェスク(以下MFとする)を基幹とする放牧への移行手順を、現地での組み立て実証に基づき明らかにする。本年度は、作溝式追播機を利用した簡易更新技術による放牧地の改善効果を明らかにし、実証農家の放牧地の生産および利用状況を把握した。成果:1)シバムギまたはケンタッキーブルーグラス等地下茎型イネ科草優占草地に、作溝式播種機で簡易更新によるMFの導入が可能で、1回の施工後、翌年2回目の施工でMF被度が50%以上のMF優占草地に植生改善することができる。2回の施工で年間合計乾物再生草量は下茎型イネ科草優占放牧地比で30%~80%程度の増加が期待でき、増加する乾物再生草量は年間合計で10a当たり290~475kgであった。このうち、乾物中のメドウフェスク収量は1回施工および2回施工で各々、中標津で195~296および500~640kg/10a、虹別で128~403および 232~562kg/10aと増加し、全体の乾物収量の増加に大きく寄与していた。虹別現地で施肥量を4.5kg/10aに減じたところ、収量レベルの低下とともに、追播による再生草量の増加程度も低下する傾向が認められたことから、MFの施肥反応が敏感で、施肥量を減ずると、生産改善効果が低下することが示唆され、MF主体放牧地の施肥管理法について、確立する必要があると考えられた。根釧地域において、MFの導入による乾物収量の生産量増加は、春~8月上旬の再生草量と8月中旬以降の再生草量の両方が増加しており、年間を通しての乾物収量の増加に貢献するものである。2)実証農家の放牧地の牧草生産および利用状況を調査した結果を示した。(i)入牧時の準備草量は、各年次の気象や施肥量で変動が大きいが、MFの導入を進めているA,C農家で変動係数が小さくなる傾向が認められた。(ii)MF導入を進めているA,C農家で、TY主体のB農家に比べ、相対的に8月以降の牧草生産が増える傾向にある。(iii)いずれの実証農家も、草地の1回当り利用率が放牧モデル(40%)に近づく傾向が認められた。
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