(1)不良環境耐性メカニズムの解明と耐性作物の作出

課題名 (1)不良環境耐性メカニズムの解明と耐性作物の作出
課題番号 2008010742
研究機関名 国際農林水産業研究センター
研究分担 (独)国際農林水産業研究センター,生物資源領域
協力分担関係 国際稲研究所
研究期間 2006-2010
年度 2008
摘要 イネ品種密陽23号 x アキヒカリの染色体断片置換系統を鉄過剰条件で栽培し、密陽23号に由来する鉄過剰耐性の3カ所(第6、10、11染色体)の連関を同定した。第10、11染色体上の連関はQTL解析で同定したものと対応するものと考えられる。イネの品種間でオゾン濃度(100 ppb)に対する反応の大きな差異を認め、オゾン耐性品種としてKasalathを同定した。日本晴 x Kasalathの染色体断片置換系統のオゾン耐性に関連する3つのQTLを検出した。2つのQTLは葉の褐変に関連しており、残りの1つは乾物生産に関与するQTLであった。耐塩性を示す栽培種ダイズ、および野生種ダイズについて高精度のQTL解析を行い、耐塩性の領域を1.6 cM (502 kb)まで絞り込むことができた。また、野生種の耐塩性は塩化ナトリウム(NaCl)のみならず炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)に対しても耐性を示すことが明らかになった。イネの乾燥耐性の評価法としての可能性を探るため、マニトールによる高浸透圧処理を行っているが、栄養生長期のマニトール処理に対するイネの品種間差異については実験間でほぼ同様の傾向を示し、再現性が確認された。シロイヌナズナのDREB2A遺伝子のダイズへの導入を加速化するために、JIRCAS研究員をブラジル農牧公社(EMBRAPA)大豆研究所に派遣し、アグロバクテリウムによる南米品種への導入を開始した。シロイヌナズナの転写因子DREB2Aは乾燥と高温に応答し、これらのストレスへの耐性を高める遺伝子群の発現を活性化するが、高温ストレス応答ではHsfA3遺伝子を標的とし、HsfA3タンパク質によりHSP (Heat Shock Protein遺伝子)等の高温ストレス誘導性遺伝子が誘導されて高温耐性となることを明らかにした。シロイヌナズナのDREB2Aと特異的に結合するタンパク質の遺伝子DRIP1, DRIP2を単離した。これらの遺伝子産物のE3リガーゼはDREB2Aの分解を促進することにより乾燥ストレス応答を負に制御すること、DRIPの機能が欠損した変異株では乾燥ストレス耐性がより向上することを明らかにした。イネのCCCH-型のZinc Fingerタイプの転写因子OsSCZF2が乾燥、塩ストレス耐性の獲得機構で機能することを示した。イネの乾燥ストレス誘導性プロモーターをマイクロアレイで探索し、新たに3種類のプロモーターを単離した。これらはこれまでのストレス誘導性プロモーターに比較して、ストレスを受けない状態での発現量が低く、ストレス下での応答性が高いという特性を示した。マイクロアレイを用いてダイズのストレス誘導性遺伝子を解析し、ダイズではABRE配列を介したストレス誘導性遺伝子の発現がDRE配列を介した場合より重要であることを示した。シロイヌナズナの転写因子DREB2A ca、 AREB1dQT等の制御遺伝子にストレス誘導性プロモーターを連結した新規コンストラクト等を国際共同研究機関(CIMMYT、IRRI、CIAT)へ送付した。通常時の発現量がこれまでのストレス誘導性プロモーターの1/10以下のストレス誘導性プロモーターをイネから新たに単離した。国際共同研究機関での対象品種への遺伝子導入は順調に進展し、イネ(IR64、Curinga)ではこれまでに送付した16のコンストラクトのうち8以上で1コピーの遺伝子が導入された形質転換体が作出された。小麦品種Fielderへのアグロバクテリウムによる遺伝子導入は軌道に乗り、これまでに6種のコンストラクトの形質転換体が得られた。これらの形質転換体でのコピー数検定は実施中である。国際稲研究所(IRRI)では、1年目および今年度作出したIR64形質転換系統のスクリーンハウスにおける乾燥耐性評価が5種類のコンストラクトについて実施され、それぞれのコンストラクトで有望な系統が選定された。国際熱帯農業センター(CIAT)は、コロンビア政府バイオセイフティ委員会から隔離圃場栽培許可を取得し、CIATの構内の隔離圃場 (約2 ha)において本プロジェクトで作出したイネの形質転換体の乾燥耐性評価が可能となった。
カテゴリ 乾燥 高温耐性 大豆 評価法 品種

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