課題名 | 農業水利システムの水利用・水理機能の診断・性能照査・管理技術の開発 |
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課題番号 | 2012020439 |
研究機関名 |
農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究分担 |
高木強治 |
研究期間 | 2011-2015 |
年度 | 2012 |
摘要 | 水利施設の機能診断法、補修・更新時の設計・管理法、性能照査法に関しては、a)用水施設保全管理のための緊急放流工設計上の問題点として、平常時と洪水時の流量変動に対応するため、本線水路に無操作を前提に水位調節ゲートが設置されたケースでは、無操作条件では要求性能を満たすのは困難であることを明らかにした。また、緊急放流工における水位の正確な推定が困難になるため背水面解析の精度が重要であることを明らかにした。b)分水施設の水理機能診断に、分水性能と放余水吐からの溢水の考え方を導入して水路システムを記号化して表示する手法を提示するとともに、それに基づく分水施設の診断調査票を作成した。c)水路の構造機能の低下と水理・水利用機能の低下との相互関係を整理し、機能診断の調査項目と手順を整理し、水路分級法を提示した。d)配水操作や充水操作などの管理操作に起因するパイプライン事故実態把握について、管破裂事故のある現場で、調査試験中に発生した破裂事故の調査を基に、減圧弁の動作不具合や脈動現象、疲労破壊から脆性破壊に至る破壊現象等の原因を明らかにした。 水利用にかかる機能低下の診断に関しては、a)頭首工の下流河床低下による護床変形メカニズムには、局所洗掘が進行する場合と、護床全体の傾斜変形が進行する場合があり、前者では急速に、後者では緩慢に護床機能の低下が進むことを実験的に解明した。護床変形の進行を遅らせる対策として、ブロック単体重量の増大やブロック連結性の向上を、損傷後の改修を容易にする対策として、護床上流部への底板敷設等を提案した。b)画像計測により急傾斜水路での表面流速Uiから断面平均流速Uを求めるため、トレーサーを用いて計測した表面流速Usを導入して、UとUsの比で表された実験係数Rmを提案し、Us-Uiとフルード数Frの間に成り立つ関係を回帰式により定めた。これを用いて求めたUとその実測値の一致を確認した。 管理労力の脆弱化に対応した維持管理法に関しては、a)土砂堆積や水草繁茂による機能低下が問題になっている用水システムの分水工調整池に対して、2次元浅水流方程式を用いた河床変動数値解析を行い、考案した障害物設置による土砂制御方法が有効であることを示した。b)農業用揚水機場の劣化故障から人的リスクに起因するものを抽出するため、劣化故障の兆候となる可能性が疑われる事象(異常振動、異常音、起動遅れ)や故障等には至らない軽微な誤操作についても記録する維持管理日報を提案した。c)水利施設の維持管理における地域住民の労力負担能力(維持管理に必要な労力を負担し得る力)と影響要因との関係を分析し、労力負担能力への影響要因として、「集落の規模」、「集落の生産環境」、「集落の社会的異質性」、「集落のソーシャルキャピタル」を抽出した。d)多気町勢和地域資源保全・活用協議会を対象とする事例調査から、次世代の成長段階に応じた学習及び参加の機会を設定することにより、親世代も含め、地域住民を巻き込んだ水利施設の活用・保全を可能としていることを明らかにした。 水域特性に応じた最適な水質評価モデル及び地域固有の生物生息に必要な水路の機能水準に関しては、a)環境要素の多様性を指標とする魚種を抽出し、炭素・窒素同位体比分布が環境の多様性の指標となることを明らかにした。b)土砂が著しく堆積し、水路管理上のリスクとなり得る水路において、土砂堆積の操作実験を行い、堆積量を精密な測量をせずに推定する手法を開発した。c)いさわ南部地区の生態系配慮型整備地区等を含めた排水路系の遺伝的多様性評価に利用するミトコンドリア及び核DNAマーカーを抽出し、それぞれ多様性分析に適用可能であることを明らかにした。d)平成23年度に構築した単離工程に基づいて、農村生態系の遺伝的多様性を計るDNAマーカーの手法開発を行った。e) 水路の環境性診断に向けて、在来ドジョウに占める外来カラドジョウの割合を指標とする、外来生物の侵入実態の評価法を開発した。f)農業用用排水路における魚類の個体群動態を精度よく記述するため、既に開発したモデルを基に個体群密度の飽和条件を考慮した評価手順を組み込み改良した。g)移動性確保効果が高く、安価・簡易なカエル類脱出工である「梁(やな)付き肋木(ろくぼく)式脱出工」を開発した。水田水域の流水環境特性を把握し、カエル類の生息場推定マップを作成した。 |
カテゴリ | 管理技術 水位調節 水田 DNAマーカー 評価法 水管理 |