課題名 | ⑤ 昆虫特異的な機能の解明と利用技術の開発 |
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課題番号 | 2013023143 |
研究機関名 |
農業生物資源研究所 |
研究分担 |
宮澤 光博 奥田 隆 加藤 祐輔 渡辺 裕文 平山 力 石橋 純 田中 博光 黄川田 隆洋 志村 幸子 コルネット・リシャー |
協力分担関係 |
東京海洋大学 |
研究期間 | 2011-2015 |
年度 | 2013 |
摘要 | カイコの中には、緑色を呈する繭を生産する品種が存在する。その原因遺伝子の解析を行った結果、緑繭品種ではpyrroline-5-carboxylate (P5C)をprolineに転換する酵素遺伝子の転写異常によって、P5Cがそのまま絹糸腺内に蓄積することが示された。さらにP5Cはカイコが 摂食によって消化・吸収したフラボノイドの1種であるケルセチン及びその配糖体と自発的に付加反応が進行し、緑色繭特有の色素分子prolinylflavonol類を合成することを明らかにした。 2.遺伝子組換えカイコ発現系を用いて、ウシ乳房炎治療薬として活用が期待されるウシ顆粒球マクロファージ・コロニー刺激因子の大量調製を行い、糖鎖が付与された発現産物を効率的に精製するプロセスを構築した。得られた精製試料は、乳房炎の治療効果を評価する動物実験に供した。 3.外来遺伝子発現システムにおいて、翻訳レベルで遺伝子の発現調節を行う新規な組換えタンパク質の発現法の開発を進めた。大腸菌をモデルとして、ヨウ化チロシン (IY)、IYを結合しアンバー終止コドンを認識するtRNA (MJR1)、IYとtRNAの結合を特異的に触媒するアミノアシルtRNAシンテターゼ (IYRS)で構成される発現系を確立した。この系ではMJR1及びIYRSを供給するプロモーターの選択が、翻訳効率の 調節能に影響を与えることが示唆された。 4.遺伝子組換えカイコ技術を用いて、抗菌ペプチドをシルク繊維に付与することを試みた。得られた組換えシルクの抗菌効果は、日本工業規格の抗菌性試験方法に定められた手法に準じて評価を行い、全ての試料で抗菌効果を確認することができた。また吸湿した天然繭は、時間の経過とともに繊維に付着した微生物によってシルクタンパク質が酸化され茶褐色に変色するが、今回作製した抗菌ペプチドを付与した組換えシルクの繭は、微生物の繁殖が抑制され、変色する現象が観察されなかった。 5.生細胞の乾燥保存技術を構築するため、ネムリユスリカ胚子由来細胞を用いて、乾燥処理前における培養条件の検討を行った。600mM の濃度に調製したトレハロース溶液に10%の培養液を加えた培地で前培養を行うと、再水和時における細胞の生存率と増殖率が向上し、半 年以上(187日間)常温乾燥保存を行うことに成功した。 6. ネムリユスリカ培養細胞を用いてプロモーターの選抜を行い、最良のプロモーターを組込んだプラスミドを幼虫の細胞内に導入する 方法を開発した。その結果、幼虫の筋肉細胞で外来遺伝子(緑色蛍光タンパク質、GFP)を発現させることに成功した。GFP由来の蛍光は、幼虫がサナギ、さらに成虫に変態しても継続して観察された。また幼虫を常温で乾燥させ、無代謝休眠状態においても蛍光は観察され、再水和によって蘇生した後も乾燥前と同じ強度で蛍光を発することが確認された。 |
カテゴリ | カイコ 乾燥 繁殖性改善 品種 |