農業水利システムの水利用・水理機能の診断・性能照査・管理技術の開発

課題名 農業水利システムの水利用・水理機能の診断・性能照査・管理技術の開発
課題番号 2014025617
研究機関名 農業・食品産業技術総合研究機構
研究分担 高木強治
研究期間 2011-2015
年度 2014
摘要 水利施設の機能診断法、補修・更新時の設計・管理法、性能照査法に関しては、
a) 用水施設保全管理のための緊急放流工の設計手法の高度化については、3次元一般座標系の有限差分法による数値流体解析手法の導入により、既往の水理模型実験の流況を高い精度で効率的に再現できることを明らかにした。
b) 用排水システムの水利用機能の違いに基づく地域特性の表示法の立案については、用水システムのもつ階層構造を用水路位数によって表記し、位数の整序を通じてシステムの構造的な機能改善を図る手法を提案した。
水利用にかかる機能低下の診断に関しては、
a) 吸出し防止マットで洗掘を遅延させて、根入れ(取水堰の基礎部分)を保全し、連結護床で吸い出し防止マットを保護するとともに、底板と根入れで下流河床低下に対する浸透路長を確保する工法が、農業用取水堰の護床の長寿命化に最も効果的であることを明らかにした。
b) 用排水路の機能監視や危険予測のための流況モニタリング技術の開発については、流量推定法として、水深の実測値のみを用いてChezy流速公式の粗度係数を設定するキャリブレーション法を提案し、傾斜地カンキツ園の実測流速や流量と本法の推定値がよく一致することを確認した。
管理労力の脆弱化に対応した維持管理法に関しては、
a) 水利施設の維持管理における地域住民の参加継続を評価する簡易手法として、「クロス表を応用した指標」を使う手法を抽出し、当該手法が2段階の因果モデルの分析にも適用できること、及び所属する地域住民の世帯数が数十規模の組織への適用が妥当であることを明らかにした。
d) 次世代育成を通した施設の維持管理を促進する手法として、学びのタイプには教材を利用した説明や実験、土地改良区職員による講義や見学、各種イベント体験等、また学びの内容にはかんがい施設の役割・機能、歴史や地域との関わりについての学習等、多様な取り組み方があることを整理した。
e) コミュニティスクールの一環として活動している事例の参与観察から、子どもの水利施設への理解の深まりに加え、子どもの親の中から多数のボランティアが出現している実態を把握し、学校を拠点とする取り組み方が、多世代の地域住民への波及効果を可能とする方法であることを明らかにした。
水域特性に応じた最適な水質評価モデル及び地域固有の生物生息に必要な水路の機能水準に関しては、
a) 魚類相及び環境(水深、流れ、土砂堆積、植生カバー)を調査し、魚類の生息にとっての限界的な条件を明らかにした。またドジョウは、生息環境が多様である水域では分布域が広くなり、水域生態系の多様性の目安となることを明らかにした。
b) 農業水路系における落差工や取水ゲートが魚類の移動を阻害することに着目し、各水路区間の魚類相の違いを現地調査に基づいて定性的に明らかにした。さらに、遺伝的多様性評価に用いる遺伝子標識について、標識となり得るDNAの塩基配列を抽出できることを確認した。
c) 排水路におけるリン動態の時期別変化の実態把握と数理モデル開発については、浮遊砂に含まれるリンは季節変化が少なく、生物が利用できる割合は灌漑初期に高くなること、底質に含まれる鉄と結合したリンは4月に高く、有機態に含まれる割合が5月以降に増加すること、を明らかにした。
d) 個体群動態モデルの最適パラメータ値解明と生態系配慮施設の影響予測モデルについては、魚道における遡上率が個体群の動態に与える影響を予測する数理モデルを開発した。
このほか、
a) 農業水利システムに適応した掃流砂量の計測手法の開発において、石川県手取川流域における掃流砂によって生じる施設管理上の問題を整理して、室内実験用の水理模型を作成した。また、北陸農政局柏崎周辺農業水利事業地区において、渓流部の他に類例のない取水形式を有する市野新田取水工に対し、水理設計の妥当性を検証するための模型実験を共同研究として行い、事業目的に適合する取水が可能な施設構造への改良を行った。
カテゴリ 管理技術 傾斜地 水管理 モニタリング その他のかんきつ

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