④ 家畜ゲノム育種研究基盤の高度化

課題名 ④ 家畜ゲノム育種研究基盤の高度化
課題番号 2014025634
研究機関名 農業生物資源研究所
研究分担 美川 智
小島 美咲
後藤 英夫
須藤 淳一
上西 博英
春海 隆
渡部 聡
小川 智子
谷口 雅章
荒川 愛作
研究期間 2011-2015
年度 2014
摘要 1. ブタの発現遺伝子の構造解析を目的に、10か月齢の雌デュロック種を用いてRNA-seqを行った。12の組織(×2セット)を用い、転写産物のゲノム配列へのマッピングによる遺伝子領域の検出と組織間での転写産物の構造比較を行った。全体で16億(平均6700万)のRNA配列が得られ、ここから全体で22,969個の遺伝子が検出された。そのうち4,774個が新規スプライシングパターンを含むものであり、897個が新規遺伝子であった。また転写産物の構造が組織によって差がある遺伝子は798個検出され、組織特異的な遺伝子構造と経済形質との関連を解析する基盤が構築された。
2. ブタの脂肪蓄積と増体に関連する遺伝子の解明を目的として、西洋系交雑ブタ(L系:脂肪蓄積小)とアジア系交雑ブタ(M系:脂肪蓄積大)から、胎齢85日、12日齢、5か月齢に肝臓、筋肉、脂肪組織をサンプリングし、マイクロアレイを用いた比較遺伝子発現解析を行った。エネルギー代謝関連では、肝臓において、12日齢のL系でステロイド合成系が、5か月齢のM系で脂肪酸代謝系が高く発現していた。Gene Ontology解析の結果では、肝臓では生体防御系、筋肉ではタンパク質輸送系、脂肪組織では細胞接着関連遺伝子に特徴的な差異が見られた。プロモーターの多型情報の蓄積も進めており、統合解析により表現型の差異に関与する遺伝子を絞り込む。
3. ブタの抗病性に関連する遺伝的要因を解明するため、568頭の大ヨークシャー種を用いた免疫能に関するゲノム配列による相関解析を行った。食細胞活性(第2染色体)、補体代替経路活性(第2及び第4染色体)、豚丹毒ワクチン特異的抗体産生能(第4及び第14染色体)に有意な領域が認められた。このうち豚丹毒ワクチン特異的抗体産生能に関連する第4染色体上の2.6 Mbの領域については、連鎖不平衡解析、ハプロタイプを用いた相関解析の結果、候補領域を318 kbにまで絞り込むことができた。この領域には4種のハプロタイプが存在し、ハプロタイプ間で抗体産生能に差が認められた。今後は、抗体産生能と抗病性についての解析を行うことにより、抗病性育種法を検討する。
4. ブタの繁殖性に関する遺伝的要因を解明するため、440頭のランドレース種を用いた産子数に関する全ゲノム相関解析(GWAS)を行った。総産子数と生存産子数では、ほぼ同様の結果が得られ、13の染色体の23か所の領域に有意性が認められた。死産数については13の染色体の22か所のゲノム領域に有意性が認められ、生存産子数と共通な領域は3か所であった。大ヨークシャー種での生存産子数に関する解析の結果、第2染色体の短腕部で検出された領域が、ランドレース種と共通であった。これらの有意なゲノム領域から遺伝子多型を抽出することにより育種に利用可能なDNAマーカーを開発する。
5. ブタ脂肪細胞の分化及び脂肪蓄積へのマイクロRNA(miRNA)の関与の解明を目的とし、脂肪合成に重要なSREBP1遺伝子のイントロン16に位置するマイクロRNA(miR-33b)の機能について、脂肪前駆細胞株を用いて解析した。miR-33bの強制発現により、ターゲット候補である転写因子EBF1の発現が抑制され、脂質合成系の鍵となる因子PPARγ及びC/EBPαの活性が低下した結果、脂質合成系遺伝子の発現低下と脂肪蓄積の減少が認められた。また脂肪蓄積が異なる系統間において、脂肪組織でのmiR-33bの発現量に差異が認められた。今後、脂肪蓄積に対する分子マーカーとしての利用を検討する。
カテゴリ 育種 ゲノム育種 DNAマーカー 繁殖性改善 輸送

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