課題名 | ③ 遺伝子組換え家畜の高度利用技術の開発 |
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課題番号 | 2014025648 |
研究機関名 |
農業生物資源研究所 |
研究分担 |
髙野 誠 淵本 大一郎 千本 正一郎 鈴木 俊一 中井 美智子 |
研究期間 | 2011-2015 |
年度 | 2014 |
摘要 | 1. ヒト化モデルブタ作出のため、T細胞受容体及び免疫グロブリン遺伝子再構成の重要な因子であるRag2を欠損したブタを作出した(25年度報告)。今年度、交配によりホモノックアウトを作出し、その機能を解析した。1)遺伝子再構成が起こっていないこと、2)T細胞B細胞を欠損し、NK細胞は保持していること、3)胸腺は萎縮しており、髄質が確認できないこと、4)リンパ節の間質細胞は存在するが、リンパ濾胞は存在しないこと、5)白脾髄の低形成が認められたこと、6)回腸パイエル板は痕跡的に存在するがリンパ球の集積は認められなかったこと、が確認された。 2. 高度免疫不全ブタの開発は、ヒトの幹細胞の移植を可能とし、ブタ体内にてヒト型臓器が構築できる可能性を持つ。25年度に、IL2RGノックアウトブタとRAG2ノックアウトブタの交配によって両遺伝子のヘテロノックアウトブタを作出した。今年度はその交配によって、IL2RG/RAG2ダブルノックアウトブタを作出した。T細胞、B細胞、NK細胞はすべて欠損しており、極めて重度な複合免疫不全であることが確認できた。 3. ブタの精子幹細胞の系譜・機能を解明することで、精子幹細胞の活用、特に遺伝子組換え個体作出の新しい方法の作出が可能となる。今年度、精子幹細胞のマーカー(Ki67:増殖性細胞質特異的、SYCP3:減数分裂特異的)を発見した。これまでブタにおいてはスクリーニングに適した有用なマーカーがなかった。今後はこのマーカーを用いて精子幹細胞の精巣組織内での局在、分布、経時的変化などの基本的データの収集が可能となるほか、精巣からの細胞単離や濃縮を行い、形質転換ブタ作出などの発生工学への応用が可能となる。 4. 顕微授精や体細胞核移植などの発生工学の手法において、卵の活性化の効率化が望まれている。正常な受精の際に観察される特徴的なカルシウム濃度変動パターンをブタで始めて観察することに成功した。一方、PLCζは精子細胞質に存在し、マウスなど他のほ乳類では卵活性化因子として同定されている。今回、ブタPLCζのクローニングに成功した。これまで報告されている配列とはアミノ酸レベルで異なっていたが、mRNAを未受精卵に注入したところ、強いカルシウムオシレーションが観察され、活性化能のあることが示唆された。 5. ヒト化モデルブタ作出のため、ヒト型SIRPA遺伝子導入ブタの作出を行った。今年度、3頭のブタが生まれた。マクロファージを採取しヒト細胞に対する貪食能の解析を行ったところ、野生型ブタ由来マクロファージに比べ、非常に低い割合であった(野生型:40.1%、遺伝子導入ブタ:5.5%)。導入したヒト型SIRPA遺伝子が発現して、ヒト細胞を非自己と認識しなくなったと考えられる。 |
カテゴリ | 豚 |