(イ)海洋生態系の把握と資源変動要因の解明

課題名 (イ)海洋生態系の把握と資源変動要因の解明
課題番号 2015027936
研究機関名 水産総合研究センター
協力分担関係 東京大学 大学院農学生命科学研究科
研究期間 2011-2015
年度 2015
摘要 ・混合域におけるプランクトン群集構造の季節変動、長期変動と環境変動に対する応答特性を明らかにし、温暖化に伴い カイアシ類の分布量が大きく変化する可能性を示した。微生物ループを構成する要素として重要なピコ・ナノプランクトンに関し、日本海では水温変化によって尾虫類個体数が変化し、それによってピコ・ナノプランクトンが変化するトップダウン効果が認められた。高次捕食者まで視野に入れた海洋生態系モデルの構築と海域特性を勘案した生態系比較について作業が進み、生態系の特性評価や漁業影響評価を行った。生態系を適切な状態に維持するための管理に向けて、balanced fishing 指標(バランスのとれた漁獲の程度を示 す指標)を提案した。
・日本海におけるマイワシの加入生残にかかわる知見の集積を進め、水温変動に伴って産卵場の形成海域が変化することを明らかにした。海洋環境変動とカツオ漁獲量との関係を解析し、親潮勢力が強く、混合域での夏季の一次生産量が大きい年に東北沖のカツオ漁獲量が増加する傾向があることを明らかにした。1910 年代から1930 年代にかけて日本海北部で生じた冬季の水温低下期にはマイワシの増加とスルメイカの減少が認められ、同年代には
サワラの漁獲も確認されたが、その要因として夏季の水温が高めであったことを示した。温暖化に伴うサンマ及び日本海でのスルメイカの漁場別の漁期、漁獲量等への影響を評価した。
・スケトウダラの太平洋と日本海の加入量変動要因の違いを明らかにし、そのメカニズムに関する仮説を提示した。マダラ仔魚の生残に及ぼす環境の影響の強弱は、それを生み出す親魚の年齢や体サイズによって変化することを示した。ホッコクアカエビについて調査船調査の結果を分析し、卓越年級群が発生すると、漁獲圧が強くなくとも雌の小型化が起こり得ることを明らかにした。東シナ海で採集されたブリ仔魚個体数密度と親魚量・加入量との
間に、それぞれ正の相関が認められた。マサバについては、仔魚期の経験水温と成長率に基づく加入量予測モデルを構築し、実用化の一歩手前まで進んだ。
・主要魚種・海域の漁海況予報(30 件)を発表・公開するとともに、主要魚種の漁獲量、漁期、漁獲物の年齢組成等や各海域の水温 、流れ、水塊構造等に関するデータを蓄積し、漁海況予測精
度向上に必要な基礎データを収集した。スルメイカ冬季発生系群については、各海域における来遊群密度の予測結果から、新たに開発した分布確率予測モデルを用いて漁場別来遊量予測モデルを開発し、得られた結果を漁況予報に反映した。瀬戸内海のカタクチイワシに関しては、有効なシラス漁獲量予測式を開発し、漁況予報に利用した。海況予測システムについては、太平洋及び我が国周辺の海況予測システム(FRA-ROMS)及び拡張版日本海海況予測システム(JADE2)の第3 期ファイナルバージョンが完成した。平成26 年度に開発した都井岬沖での黒潮流軸位置予測手法を、都井岬沖下流域まで延伸することにより、下流域においても黒潮流軸位置の予測が大幅に改善することを確認した。
・本研究課題の成果は、重要資源における変動要因の解明、生態系モデルを用いた資源管理方策の提案等に活かされ、また、気候や海洋環境変化が資源変動や漁業活動へ及ぼす影響の解明とその対応策の策定に役立った。今後は、さらなる資源評価精度の向上や操業の効率化等への貢献が期待される。
カテゴリ 管理技術 季節変動

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