農業水利システムの水利用・水理機能の診断・性能照査・管理技術の開発

課題名 農業水利システムの水利用・水理機能の診断・性能照査・管理技術の開発
課題番号 2015027877
研究機関名 農業・食品産業技術総合研究機構
協力分担関係 旭有機材工業
研究期間 2011-2015
年度 2015
摘要 水利施設の機能診断法、補修・更新時の設計・管理法、性能照査法に関しては、
a) 平成26年度に開発した3次元一般座標系の有限差分法による数値流体解析手法の高度化を進め、解析から直接的に得られる横越流堰の越流量と、水面形の解析値を既存の横越流堰の流量公式に適用して得られる越流量との間に、高い整合性が認められることを明らかにした。
b) 水路壁面の粗度をパッチワーク状に配置した開水路の水理模型実験では、粗度変化に対して断面変化や水路床の凸凹の影響が相対 的に大きいことを明らかにした。上・下流制御によるゲートオペレーションや、水路内貯留の活用による送配水効率の向上対策技術を立案し、モデル地区において、農業用水の送配水効率を現状比で1割程度向上させることを実証した。
水利用にかかる機能低下の診断に関しては、
a) 堰直下の下流洗掘が生じず、洪水のピークではマット直下流の洗掘域が埋め戻されるため安定的に機能する護床マット工法の水理 設計手法を提示した。また、マット下流端へのブロック投入で、さらに安定性を高められることも確認した。
b) 画像計測による流量推定のための撮影及び通信機器として、汎用的なネットワークカメラ及び3G回線用ルータが使用可能なことを 現地試験により明らかにした。ルータには複数の機器が接続でき、安価な監視カメラや水位・流量センサから各種の情報が取得できることを確認した。
管理労力の脆弱化に対応した維持管理法に関しては、
a) 水利施設の維持管理への参加行動と影響要因(2段階10要因)に関するデータを使い、クロス表を応用した要因選択指標の値が大きな要因を選択する手法を示し、表計算ソフト「Microsoft Excel」で要因選択指標を計算するためのシートを作成し、現地実証試験に 用いるためののマニュアル案を作成した。
b) 農業水利施設の機能や歴史的な価値を次世代に伝えるために優れた教材を製作している土地改良区の事例には、地元歴史愛好家の 協力に基づく製作、歴史読本や歴史漫画の作家に作品として扱ってもらうなど、さまざまな工夫があることを明らかにした。
c) 地域の学習を進めながら歴史書の掘り起こしやワークショップを行い、教材の製作などを通して学びの内容の充実を図り、さらに 、土地改良区、学校、地域にある多様な主体から成る運営体制を整えることで、多世代の地域住民を巻き込みながら農業水利施設の意義や重要性を広く啓発し、施設の保全管理への関心を高めてもらう方法を提示した。
水域特性に応じた最適な水質評価モデル及び地域固有の生物生息に必要な水路の機能水準に関しては、
a) 生息環境と炭素安定同位体比(δ13C)・窒素安定同位体比(δ15N)の関係を分析し、いさわ南部地区の原川幹線排水路では、肉 食であるギバチのδ15Nやそれらの標準偏差σが生態系の遷移とともに上昇していることを確認した。他地区の調査結果も踏まえると 、平成26年度に仮説として提示したσ<1.0が生物多様性の豊かさを表す閾値である蓋然性が高まった。
b) 農業用水路の不連続構造物と魚類個体群交流の関係分析において、落差工地点の水位差が概ね1~2年に1回の頻度で解消されていることを明らかにするとともに、調査対象の臼井と神郡地区の優占種であるカワムツからDNAを抽出し、その中に含まれているマイクロ サテライト配列を単離した結果、合計340の遺伝子標識の候補配列を見つけ出すことができた。
c) 支線排水路を流れる浮遊砂に含まれるリンを易分解性画分と難分解性画分に分け、幹線排水路底質への沈降と流出割合、及び難分 解性画分のうちNaOH抽出リン化合物の分解過程を仮定してモデル化した。調査地区の幹線排水路底質に含まれるリンの易分解性画分の割合を定性的に再現することができた。
d) 個体群動態評価手順として、①生態系配慮施設設置前の個体数分布状況を設定、②魚道の遡上率等を設定し水域内の個体群動態シ ミュレーションを実施、③②の条件を変えて結果を比較することで個体群の回復に効果的な配置と機能を明らかとする、を提示した。これに基づき、魚類、両生類の移動分散可能率をパラメータとして、個体群存続確率を明らかにした。
e) 現地のコンクリート水路にコンクリートブロックを配置した環境修復工では、ブロック設置後の堆積厚に影響する要因として、灌 漑期の流速と出水が抽出された。水制工を農業水路に適用する場合の課題としては、効果的に流速を多様化し、土砂を捕捉する条件を明らかにする必要があることを示した。

このほか、
a) パイプラインの事故原因に関して、管路の疲労破壊に至る水理学的な原因が、末端の自動給水栓閉塞時の水撃圧に起因する圧力上 昇であると推察するとともに、管内圧力変動を低減して塩ビ管の疲労破壊による破裂事故を予防するための装置を開発した。
b) 農業水利システムに適応した掃流砂量の計測手法の開発において、砂礫の衝突パルス補足率は砂礫の粒径、センサの露出高に大き く依存するが、水路流速にはほとんど因らないことを明らかにした。
カテゴリ 管理技術 動態シミュレーション 水管理

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