課題名 | ③ 作物ゲノム育種研究基盤の高度化 |
---|---|
課題番号 | 2015027893 |
研究機関名 |
農業生物資源研究所 |
協力分担関係 |
国立研究開発法人農業環境技術研究所 国立大学法人佐賀大学 |
研究期間 | 2011-2015 |
年度 | 2015 |
摘要 | 1.コシヒカリと長粒品種IR64の間で作成した正逆染色体断片置換系統群において、置換領域を細分化した解析法によっ て種子形に関して65か所の遺伝子座を検出した。同組み合わせのF2集団では8か所しか検出できなかったことから、検出感度を約8倍高めるとともに種子形変異に非常に多数の遺伝子が関わることを明らかにした。またコシヒカリ遺伝背景に11種類のアジア栽培品種のゲノム断片を導入した置換系統群の種子形を評価することで228個の対立遺伝子を検出した。これらは世界の研究機関で検出された200個以上の既報対立遺伝子をほぼ包含するとともに、連鎖地図上の位置関係から新規の遺伝子座も含んでいた。このように過去10年間で充実させた実験系統群はゲノム全体に分布する遺伝効果の小さい自然変異遺伝子群をそれ以前の実験集団にない精度で検出する有効なツールであることが証明された。 2.植物の基礎研究における遺伝子機能解析のツールとして、あるいは品種改良における効果の異なる表現型アリルの選抜手段として、候補遺伝子への人為的な突然変異誘導が再認識されている。DEB、MNU、EMS、ENU、Az処理による約10,000系統からなるコシヒカリ突然変異集団を養成し、M2世代DNA及びM3種子からなる変異体ライブラリーを構築した。多様な変異スペクトラム及び変異密度の調査か ら実用的なライブラリーと判断し、委託プロジェクト等の要請に応じてTILLING法やHRM法による59遺伝子の変異体のスクリーニングを実施している。これまでに1,052の変異を見出し、516の非同義置換系統、14のスプライシング変異系統、20のナンセンス変異系統、6 のフレームシフト変異系統が提供されている。圃場での精密な表現型評価を必要とする形質の解析や育種素材化にとって本ライブラリーの利用価値は高い。 3.作物の乾燥ストレス回避や登熟性の向上にとって根の形態や分布の遺伝的制御は重要である。イネ自然変異品種群の多くは深根性遺伝子DRO1が機能型にも関わらず根の伸長角度に幅広い変異を示す。機能型DRO1を持ちながら異なる伸長角度を示す複数の多収イネ品種と深根性品種KinandangPatongのQTL解析によって新たな深根性遺伝子の検出を試みた。その結果、第2染色体にDRO4、第4染色体にDRO2、第6染色体にDRO5を見出すとともに、効果の小さな多くのQTLも推定された。これらのQTLは機能型DRO1を遺伝背景とする集団で見 出されたことから、多くのイネの根系改変による機能向上に向けたゲノム育種への利用が期待できる。 4.重要形質の解析に使用されているダイズ23品種について、既存の各SNPに機能アノテーションを付与した。品種によって異なるも のの、機能欠損型変異は各品種600から900箇所であり、米国品種と比較して日本品種に機能欠損型変異が多い傾向を示した。これらSNPの機能変異情報を、複数ゲノムを可視化するブラウザであるTASUKEに格納し、プロジェクト参画者に公開した。 5.「エンレイ」へ有用な遺伝資源である「Peking」の染色体断片を導入した全99系統からなる染色体断片置換系統シリーズを開発した。「Peking」ゲノムの網羅的解析、ストレス耐性や病虫害抵抗性の育種素材として利用を図る予定である。また、「エンレイ」に2 回の変異原処理を行うことにより高密度に変異を集積させた突然変異体ライブラリーを作成し、アンプリコンシーケンス解析や高解像度融解曲線分析法(High Resolution Melting:HRM)により塩基変異を迅速に検索するシステムを開発した。委託プロジェクト等の要請により、育種素材開発ならびに遺伝子機能解析のために変異体を単離し、提供を進めている。 6.国内8箇所において複数年間に取得されたコアコレクションの特性評価データと約12,000マーカーからなる高密度SNPパネルの遺伝子型データを用いてアソシエーション解析を行い、予測モデルを構築した。このうち、成熟までの日数及び粒大では、実測値との相関がR=0.82以上及び0.91以上と高い精度で予測できるモデルを構築した。粒大の予測モデルについては表現型不明の材料であっても、遺伝子型がわかれば高い精度(相関係数R=0.69)でその表現型値を予測できることを実証した。 7.ダイズの収量性の向上と安定を目指して、収量構成要素、病虫害抵抗性、開花・成熟期、草型、品質などの重要形質について原因遺伝子の座乗領域の絞り込みを進めた。このうち、ダイズモザイクウイルス抵抗性、葉焼病抵抗性、基本栄養生長性、サポニン組成に関わる各候補遺伝子を単離し、機能解析を進めた。ダイズモザイクウイルス抵抗性の原因伝子に関しては、「ポティウイルス抵抗性を有するポリヌクレオチド、タンパク質及びそれらの用途」として特許を出願した。また、すでに報告された重要形質を中心に、選抜用DNAマーカーを開発し、他の独立行政法人や公設農試と共同でDNAマーカー選抜育種を強力に推進した。このうち、DNAマーカーにより 茎疫病抵抗性を導入した「ダイズ茎疫病抵抗性黒大豆品種(兵系黒5号)」を兵庫県と共同で品種登録出願の予定である。 |
カテゴリ | 病害虫 育種 遺伝資源 乾燥 ゲノム育種 大豆 DNAマーカー 抵抗性 品種 品種改良 |