課題名 | ④ 家畜ゲノム育種研究基盤の高度化 |
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課題番号 | 2015027894 |
研究機関名 |
農業生物資源研究所 |
研究期間 | 2011-2015 |
年度 | 2015 |
摘要 | 1.ブタゲノム上の脂肪合成や脂肪細胞分化に関与することが想定される遺伝子の約3,000箇所の上流配列(合計10.2 Mb )について、次世代シーケンサーを用いたターゲットシーケンシングにより網羅的な多型解析を行った。約11万個のSNPと約5.5万個の挿入・欠失(indel)多型が検出されたが、東洋品種と西洋品種で分離するものは、それぞれ4,571個、1,562個であった。その内、脂 肪合成または脂肪細胞分化への関与が示唆される転写因子の結合配列中に位置するものは、それぞれ26個、12個であり、これまでに東洋品種と西洋品種間で検出されたQTLの3つについてゲノム領域が共通し、候補多型が選抜された。 2.大ヨークシャー種を用いて、各種免疫能に関してゲノムワイド相関解析を行った。その結果、食細胞活性、補体代替経路活性、豚丹毒ワクチン特異的抗体産生能について、有意な相関を示すゲノム領域が検出された。第2染色体に検出された食細胞活性に関連する ゲノム領域については、ハプロタイプ解析により単一の遺伝子のみを含む領域にまで絞込むことができ、遺伝子内での多型解析により3'非翻訳領域に3つのSNPが検出された。これらのSNPは抗病性向上のためのDNAマーカーとして有効であると考えられる。 3.増体性及び筋肉内脂肪含量に特徴がある2系統のデュロック種「アイリスナガラ」と「ボーノブラウン」を用いて、表現型の差異 の原因を検討するため、子豚育成時期の40日齢の胸最長筋を用いたメタボローム解析(キャピラリー電気泳動質量分析)を行った。その結果、ボーノブラウンではリジン及びリジンの代謝産物である2-アミノアジピン酸の含有量が多く、リジンの利用性低下が示された。近年、低リジン飼料が霜降りを誘導することが知られているが、ボーノブラウンは遺伝的にリジンの利用性が低いことが、霜降り割合が高くなる一因と考えられた。一方で、アイリスナガラでは、スペルミンなど筋発達の優位性を反映する物質が多かった。これらの知見により、肥育前に枝肉タイプを予想するための分子マーカーの開発が期待される。 4.一般的なゲノムワイド相関解析のための解析モデルは、ランダムサンプルを対象としたヒト分野で開発されたものであり、血縁があるサンプルを用いる家畜での解析には十分に対応できてはいない。またSNPの高密度化により、解析時間の増大が問題となっている 。これらに対応するため、変分ベイズ法を用いた新規解析モデルを構築し、プログラム化した。実際のブタ集団を用いたデータ分析では、従来のGibbsサンプリング法に比べて正確性はほぼ等しく、計算速度が30倍となった。今後、家畜において効率的なゲノムワイド 相関解析が可能となる。 |
カテゴリ | アイリス ゲノム育種 DNAマーカー 品種 豚 メタボローム解析 |