課題名 | ③ 家畜の発生分化機構の解明 |
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課題番号 | 2015027898 |
研究機関名 |
農業生物資源研究所 |
研究期間 | 2011-2015 |
年度 | 2015 |
摘要 | 1.ウシの生殖細胞を可視化するため、CRISPR/Cas9アシストによるPOU5F1遺伝子ノックインを実施した。現在まで11株の細胞において設計通りの相同組換えが確認され、ウシ体細胞においてもCRISPR/Cas9アシストによるノックインが可能であることが示された。しかしながら、ドナーDNA中の配列に点突然変異が多く認められ、相同組換え後も繰り返しゲノム修復が行われている可能性 が示唆された。変異のほとんどはトランジション変異であったが、赤色蛍光タンパク質(DsRed)の蛍光活性や抗原性の消失を伴う変異 も生じていた。アミノ酸変異のないノックイン株について核移植胚を作成したところ、胚盤胞でDsRedが発現していることが確認され た。現在、胚盤胞でDsRedの発現が確認されたドナー細胞2株について核移植胚を作成し、胎子の生殖系列細胞におけるDsRedの特異的 発現について検証中である。 2.これまでに、超低温保存した幼若期のブタ精巣組織をヌードマウスに移植し、精祖細胞から精子を発生させ、さらに顕微授精により産子を生産する技術を開発した。本年度は、本技術が胎子期の精巣にも適用可能であることを明らかにした。すなわち、超低温保存した胎子精巣の異種間移植及び顕微授精を実施したところ、胎齢30、55及び90日のいずれのブタ胎子精巣からも、移植後240日以降に 精子が回収され、顕微授精により受精卵が得られた。さらに、この技術を血友病モデルブタに適用し、胎齢70-80日の血友病モデル豚 の初代雄クローン胎子の精巣を採取し、超低温保存した後、異種間移植に供した。移植後300から370日経過した時点で移植精巣組織から精子が回収された。回収した精子を、別途準備した成熟卵の細胞質に注入して顕微授精卵を作製し、発情を同期化した成雌ブタの卵管内に移植中である。 3.シカによる食害を軽減するための個体数調整を目的として、雄に対して精子等を抗原とした免疫処置を施すことで生涯避妊効果が持続しうる免疫手法の開発を目指す。前年度開発した免疫賦活化剤(LPS+71VG)について、雄ラットに抗原接種して末梢血中抗精子抗体価を測定した結果、LPS+71VGの免疫賦活化効果が確認された。また、マウス精子(異種間)の2回抗原接種及びラット精子(同種間 )の単回抗原接種を行い不妊化の効果を検討した結果、いずれの場合も雄ラットの不妊化が可能であることが判明した。さらに、前年度精子を接種したヤギについて、定期的に人工膣を用いて採精し、精液性状及び射出精子数を計測した結果、一部に射出精子量が少ない傾向が見られた。 |
カテゴリ | シカ 豚 山羊 |