課題名 | 3 開発途上地域の地域資源等の活用と高付加価値化技術の開発 |
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研究機関名 |
国立研究開発法人国際農林水産業研究センター 農村開発領域 社会科学領域 生物資源・利用領域 生産環境・畜産領域 林業領域 水産領域 熱帯・島嶼研究拠点 |
協力分担関係 |
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 国立研究開発法人森林研究・整備機構 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 京都工芸繊維大学 バンドー化学株式会社 筑波大学 国立研究開発法人産業技術総合研究所 ケンミン食品株式会社 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 株式会社ペプチド研究所 |
研究期間 | 2016-2020 |
年度 | 2020 |
摘要 | プログラムC「開発途上地域の地域資源等の活用と高付加価値化技術の開発」(高付加価値化研究業務セグメント)では、アジア地域における農山漁村開発を支援し、開発途上地域の農民の所得向上と、我が国が進めるグローバル・フードバリューチェーン戦略に貢献するため、多様な地域資源の活用と、新たな高付加価値化技術の開発に取り組んでいる。 令和元年度実績に対して、主務省ならびに外部評価委員から、開発途上地域に定着しうる技術開発や社会実装を予見させる多くの成果の作出が評価され、有効性の実証段階に至っている研究開発成果については、社会実装への速やかな移行が求められたことから、令和2年度はコミュニケーションツールを活用した情報共有や議論等によって新型コロナウイルスの感染拡大に伴う影響を最小限に留める工夫を重ねながら、現地語を用いた普及用マニュアルの作成やカウンターパートによる住民説明会の開催等、開発技術の普及や社会実装に繋がる活動を実施した。 中長期計画において【重要度:高】と位置づけた課題を旗艦プロジェクトとし、研究資源を重点的に投入した。本研究ではアジア地域伝統食品の高品質化・高付加価値化を目指し、食品中に含まれる血圧調節関連生理機能性成分の解明や評価手法の開発を行うとともに、ダッタンソバの多用途化や保存性向上のための加工・流通技術を開発した。さらに我が国が進めるグローバル・フードバリューチェーン戦略に貢献するため、ロール式籾摺り機での短粒米と長粒米の挙動解析を行うなど、国際農研が有する研究成果・知見とタイにおけるネットワークを活用し、我が国民間企業と共同でインディカ米(長粒種米)用籾摺りロールの開発を進めた。また、本プロジェクトで獲得したタイの発酵型米麺カノムチンやラオスの淡水魚発酵調味料パデークの品質・保存性向上に関する技術・成果については、共同研究機関や現地企業と協力しながら印刷物・インターネット等を活用した情報発信を行い、社会実装に向けた成果の普及に取り組んだ。さらに、技術の高度化や収益向上を図るため、中国においてコメやソバに関する消費者ニーズや生産・流通システムの分析を行い、サプライチェーンの現状や個別技術に基づくバリューチェーンの改善策を提示した。 生物学的同時酵素生産糖化法(BSES法)で用いる好熱嫌気性セルロース分解細菌との共培養が可能なβ-グルコシダーゼ生産菌の特徴解析を行い、同種の微生物基準株に比べて、国際農研が分離した株の生育やβ-グルコシダーゼ活性が優位であることを確認した。本菌は、微生物の共培養による連続的な糖化プロセスを構築する基盤的な成果であることから、特許出願の準備を進めている。微生物糖化技術の高度化に向けてはさらに、石垣島の堆肥から結晶性キチンを分解できる新属新種の好熱嫌気性細菌を発見したことにより、エビ殻やカニ殻等、キチンを含む水産系バイオマスの資源化が期待できる。高効率で低コストな糖化技術であるBSES法については、既にマレーシアのオイルパーム幹を対象とする社会実装に向けた取り組みを進めているが、令和2年度から新たに麦粕を対象とする日本国内での民間企業との共同研究を開始し、一層の加速化を図っている。さらに、生分解性プラスチックの生産技術を開発するため、国際農研で単離し、グルコースを利用できるよう改変した変異株によるポリヒドロキシ酪酸(PHB)の高い生産性を確認し、本変異株を効率よく獲得するための形質転換法を開発した。 ラオスの低地天水田地域の小規模農家を対象とする溜め池養魚技術の経済性を評価し、収益を黒字化する指標を提示するとともに、ラオス在来魚種を対象とする水田・溜め池養魚技術の普及を図るため、ラオス語の技術マニュアルを作成し、令和3年3月に本マニュアルを用いた住民説明会を開催した。在来魚に関する一連の調査・研究成果については、国際農業研究叢書第25号「ラオス在来魚類研究~在来種の養殖適用と資源保全~」にとりまとめるとともに農林統計協会から市販したことで、日本国内においても広く成果の発信が期待できる。傾斜地農業の基幹作物である陸稲に関しては、農民参加型試験による有望系統の評価を行い、極強旱魃条件で高収量を示した1系統、平均的な降水量条件下で高収量を示した2系統を選抜するとともに、現地における自立的な種子の生産・販売体制の構築を支援した。この結果、これら高生産性陸稲3系統は、令和3年よりラオス畑地農業研究センターにおいて種子増殖・販売されることとなった。さらに、汎用小型ドローンとオブジェクトベース画像解析を用いて、陸稲圃場のイネと雑草を高精度で判別する手法を開発した。農村部の栄養改善に関しては、食事調査によって把握したタンパク質摂取不足や米食への依存による必須アミノ酸の不足に対して、国際農研の成果である水田・溜め池養魚や淡水魚発酵調味料パデークを活用したタンパク質及び必須アミノ酸の供給改善策を提示するとともに、パデークの仕込み時の塩分を18%程度に調整することでヒスタミン生成による変敗が抑制され、アレルギー様食中毒のリスク低減が期待できることを示した。 チークについては、個体の直径成長と周辺木の胸高断面積合計の関係をモデル化し、商業サイズの収穫量を大きくするためのチーク人工林密度管理指針を示すとともに、タイ王立森林局のクローン検定林から検出した147クローンの遺伝構造を解析し、3つのクラスターに分類されることや、樹高は環境変異に対して遺伝率が高いことなどを明らかにした。また、ラオスの傾斜地における土壌侵食リスク評価モデルを構築し、土壌保全を考慮したチーク人工林適地判定手法を開発した。フタバガキについては、気温に対する展葉・成長の応答特性を解明したほか、複数座ゲノムワイド関連解析(GWAS)による遺伝子座の選抜及びこの選抜遺伝子座を用いたゲノム推定モデルによる優良個体の選抜法を提示した。 ミャンマーのカキ養殖漁場環境の季節性を把握し、現地の漁業者グループに、養殖場付近の毎月の塩分・クロロフィル分布図を提供したほか、ハイガイの丸型指数と肥満度から生育状態と漁場環境を評価する手法など、マレーシアのハイガイ漁場管理に関する一連の研究成果をとりまとめたMalaysian Fisheries Journal誌特集号を公表した。フィリピンで実施している多栄養段階複合養殖(IMTA)技術については、収支を改善するためのミルクフィッシュの出荷サイズや生産尾数の指標を示すとともに、底質環境が稚ナマコの生残・成長に及ぼす影響を明らかにしたほか、数年に亘る実証試験で得られた成長・生残および収支の結果をとりまとめた事例集を作成した。さらに、タイで実施しているウシエビ混合養殖については、2軒の養殖業者による現地実証試験を継続し、これまでに行った種苗選別やベントス保護区画設置などの技術的改善によって、目標とする生産性を安定的に達成できることを示すとともに、英語及びタイ語のマニュアルを作成し、Webサイトに掲載するなど、開発技術の普及に向けた情報発信を強化した。 |
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