摘要 |
食品中の抗酸化成分が、調理、摂取の過程を経て消化管から吸収され体内に移行する割合を明らかにすることを目的とし、各種食品から抗酸化成分の探索を行い、調理損耗、消化管内での安定性、およびラット体内での吸収について調べた。抗酸化成分として、オリーブからヒドロキシチロゾール、ヒジキからフコキサンチン、ヤーコンからトリプトファンおよび各種カフェオイルアルトラル酸などを見出したが、特にシュンギクに含まれるカフェ酸系列の3化合物(クロロゲン酸、3,5-ジカフェオイルキナ酸、および4-スクシニル-3,5-ジカフェオイルキナ酸)に注目し、ゆで加熱中の損耗と人工消化液中での安定性を調べたところ、通常の加熱条件(沸騰水中加熱30秒程度)での損耗は少なく、また人工消化液処理によってもほとんど変化はなかった。さらに、ラットにこれらの化合物を投与し、経時的に採血して血中濃度を測定した。静脈注射ではこれらの化合物は投与後30分で90%以上が消失し、分子量が大きいものほど血中濃度は高い傾向があったが、経口投与ではこれらの化合物は血中への移行が認められなかった。同時に試験したカフェ酸は経口投与直後から血中への移行が認められたことから、これらのカフェ酸系列の化合物はある程度大きな分子になると直接消化管を通して吸収されないことが確認された。
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