摘要 |
環境に優しいイネいもち病の防除法として同質遺伝子系統の混合栽培(マルチライン)が注目されているが, いもち病菌の病原性変異によるスーパーレースの出現によって発病抑制効果が崩壊する可能性がある。そこで,いもち病菌の病原性変異要因と考えられる準有性的組み換えと有性生殖により出現した菌株の病原性について, その遺伝的特性を明らかにし,マルチラインの効果的利用の基礎的研究を行った。イネ系統K59-1に病原性を有し, 品種「八反3号」に非病原性の菌株(ビアラフォス耐性菌)とイネ系統K59-1に非病原性で品種「八反3号」に病原性を有する菌株(ブラストサイジンS耐性菌)を親菌株として, 混合培養によって菌糸融合を誘発し, 両薬剤の耐性遺伝子を併せ持つ菌株を準有性的組換え菌として選抜した。また, 親菌株を対峙培養により交配し, 両薬剤に耐性を示す子のう胞子を分離選抜して 交配後代とし,準有性的組換え菌と交配後代のイネ系統K59-1および品種「八反3号」に対する病原性を調べた結果、病原性の分離は類似していた。これらの結果から, イネいもち病菌の準有性的組換えは, 有性生殖と同様に病原性変異菌を発生させることが明らかになった。本研究成果の残された課題の病原性変異菌の発生頻度については,農業技術研究機構中央農業総合研究センターに引き継ぎ研究をおこなう。
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