摘要 |
内湾の魚類養殖漁場では,海水交換に伴う水質(溶存酸素,栄養塩)変化が魚類養殖生産に大きな影響を及ぼしている。特に,中層貧酸素水塊の発生は,養殖魚に悪影響を及ぼしている。本研究では,中層貧酸素水塊の発生機構および栄養塩環境の変動機構を解明し,それらの発生や変動を予測することを目的とした。9~10年度は,中層貧酸素水塊の発生原因が湾外下層水の流入にあることを解明し,さらに数値モデルを開発して中層貧酸素水塊の発生を再現することが出来た。11~12年度は,魚類養殖場における栄養塩分布の変動を把握すると共に,海水交換発生時(湾外水進入時)の栄養塩収支をボックスモデル解析により求め,非物理項(生物項+負荷)による栄養塩類の変動量を見積もった。上層では,硝酸・亜硝酸態窒素,アンモニア態窒素,リン酸態リンがそれぞれ5.1,20.9,6.0mg/m^3day消費され, 溶存有機態窒素が3.4mg/m^3day増加した(負荷)。下層では,硝酸・亜硝酸態窒素,アンモニア態窒素,リン酸態リンがそれぞれ2.6,57.4,11.7mg/m^3day増加し,溶存有機態窒素が10.1mg/m^3day減少した。今後に残された課題は,漁場における低次生態系の構造を把握するとともに,生態系モデルを構築して水質変動を記述し,養殖場環境の適正管理に資することである。
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