課題名 | 森林流域における水循環過程の解明 |
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課題番号 | 2001001052 |
研究機関名 |
独立行政法人森林総合研究所 |
研究分担 |
森林総合研究所 水土保全研究領域 チーム長 森林総合研究所 水土保全研究領域 水保全研究室 |
研究期間 | 新規2001~2005 |
年度 | 2001 |
摘要 | 1.当年度の研究目的 林分水収支、土壌水の分布や移動、地下水滞水層や流出発生域の消長、そして流域水収支や降水流出など様々なスケ―ルで起きる水文現象の季節的あるいは出水時の変動特性を把握し、森林流域における水循環の仕組みを明らかにするため、 1)降雨のトレーサ濃度が樹冠を通過するとどのように変化するのか,また降雨と林内雨のトレーサ濃度が一降雨中にどのように変化するのかを調査し、このようなトレーサ濃度の変化が流出起源の推定に及ぼす影響を明らかにする。 2)森林流域の流出特性が比較的単純なモデルによってどの程度再現されるか検証し,水流出過程の予測性能の向上に必要な基礎情報を得る。 2.当年度の試験研究方法 1)トレーサによる森林流域における流出水の起源の推定:茨城県常陸太田市郊外の80年生スギ・ヒノキ人工林で覆われた流域および近接する露場において,一降雨中の降雨と樹冠通過雨を約3.5 mmずつ,および樹幹流は約0.04 mmずつ分割して採水した。また出水時の河川水を自動採水装置(ISCO 6700型)により採水した。採水した水の酸素安定同位体比を分析した。 2)森林流域における水移動過程の予測手法の向上:同流域における観測結果を用いて,地形情報に基づく準分布型流出モデルであるTOPMODELの流出量再現性をテストした。 3.当年度の研究成果 1) 水に含まれる重い同位体(Dあるいは18-O)の割合は、降雨<樹冠通過雨<樹幹流の順に大きくなる傾向が見られた。一降雨中には降り始めで同位体比が大きく次第に小さくなっていく傾向が見られた。したがって,流出起源を推定するためには,森林で覆われた流域においては降雨のトレーサ濃度ではなく樹冠通過雨のそれを使用し,一降雨中の時間変化も考慮する必要がある。このように、森林水文学的解析に安定同位体を使用し、そのトレーサとしての有効性を確認するために必要な降雨成分を確定したことは今後の解析に非常に有用なものとなった。 2) モデルによる流域流出量の計算結果は実測値と比較的よく一致していたが,流域内の流出発生パターンの計算結果は実測値に比べ明らかに系統的な誤差を生じていた。これは,モデルの構造に実際の現象とは本質的に合わない部分があることを示している。以上の結果は使用した流出モデルの改善により流域内の分布を含めた現実的なモデルの構築の可能性を強く示唆している。 |
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