課題名 | 熱帯域のランドスケープ管理・保全に関する研究 |
---|---|
課題番号 | 2001001090 |
研究機関名 |
独立行政法人森林総合研究所 |
研究分担 |
森林総合研究所 海外研究領域 海外森林資源保全研究室 森林総合研究所 北海道支所 樹木生理研究室 森林総合研究所 北海道支所 植物土壌系研究グループ 森林総合研究所 森林植生研究領域 植生管理研究室 国際農林水産業研究センター 造林部 森林総合研究所 水土保全研究領域 チーム長 森林総合研究所 立地環境研究領域 土壌資源評価研究室 |
協力分担関係 |
国際農林水産業研究センター |
研究期間 | 新規2001~2002 |
年度 | 2001 |
摘要 | 1.当年度の研究目的 ペランギ川上流に設定した緑の回廊の植栽試験において、植栽された果樹木などの生理生態的特性を現地測定する。合わせて生存率や成長速度の測定を行う。また、熱帯林小流域における熱帯林伐採による水文特性の変化を明らかにすることを目的とした。 2.当年度の試験研究方法 1)「緑の回廊」造成試験においては、マレーシア国ネグリセンベラン州のペランギ川上流の支流沿いに両側各10m幅で植栽試験地を設定している。試験地は蛇行する川に沿って全長約600mに渡って設けられ、一端は断片化しつつあるパソー保護林の北端の林縁に接している。回廊造成のための一次植栽樹種として、今年度はいずれも郷土樹種のKundang (Bouea oppositifolia)、 Petai (Parkia speciosa)、 Kasai (Pometia pinnata)、および Ara (Ficus spp.)を2mx3mの間隔で植栽した。これらの樹種はいずれも、動物が好む果実を付け、またパソー保護林内に普通に見られる樹種である。樹高成長および生存率を継続的に調べている。また、全天下での光合成速度およびクロロフィル蛍光反応を測定した。 2)森林伐採の水文特性変化においては、マレイシア国セランゴール州のブキッタレ水文試験地において水文観測を実施した。C1流域はコントロール(2次林)とし、C2流域は、河川両岸20mをバッファーゾーンとして残し、皆伐後、早生樹種を植栽する予定である。現在、主林木のみを伐採した状態である。さらに、C2流域内の伐採跡地、スキットトレイルおよびバッファーゾーンに浸食プロットを設置し、ステンレス製の浸食ピンを用いて浸食・堆積量を測定した。 3.当年度の研究成果 1)「緑の回廊」造成試験においては、植栽後12ヶ月後の生存率は、Ara (Ficus spp.)では良好で、Kasai (Pometia pinnata)では約50%であったが、Kundang (Bouea oppositifolia)およびPetai (Parkia speciosa)は大半が枯死し10%以下であった。枯死率は斜面下部のほうが上部や中部よりも高い傾向が認められたが、斜面下部で生き残ったものは樹高成長が大きかった。このことは、AraおよびKasaiで顕著であった。AraおよびKasaiの光合成速度の最大値は、他の2樹種に比べていずれも大きく、また、日単位の積算光合成量も大きかった。クロロフルの蛍光反応の測定では、4樹種のうちAraが最も強光に強く、次いでKasaiおよびPetaiでは強光に弱く、Kundangは極めて強光に弱いことが明らかになった。このように、光合成能力や強光耐性の樹種による違いが、植栽試験における生存率や樹高成長の差となってあらわれたと考えることが出来た。 "2)森林伐採の水文特性変化においては、伐採地およびスキッドトレイルでは、浸食量の平均値は、12ヶ月で土壌深で9.8mmおよび19.8mmであった。バッファーゾーンでも浸食が認められたが、その値は小さく、12ヶ月で6.4mmであった。また、バッファーゾーンは、林道から流れ込む土砂を捕捉し、河川に直接流れ込むことを防ぐ機能があることが認められた。伐採前の年間流出量について、コントロールのC1流域と主林木を伐採したC2流域の河川流出量は同様な値を示したが(C1=1,614mm/年, C2=1,596mm/年)、伐採後ではC2流域からの流出量がC1流域からの流出量より大きい値を示した(C1=1,674mm/年, C2=1,857mm/年)。この違いの主な理由は主林木伐採による流域からの蒸発散量および土壌深く浸透する量の低下が原因と考えられた。また、堰堤に堆積した土砂流出量も、伐採の影響は顕著で、コントロール流域のC1で伐採前に21.6kg/ha/年、伐採流域のC2で25.2kg/ha/年であったが、伐採後にはC1で12.0kg/ha/年、C2では174.6kg/ha/年と15倍近い差が観測された。" |
カテゴリ | 管理技術 |