| 課題名 |
崩壊に瀕した大台ヶ原森林生態系の修復のための生物間相互作用の解明 |
| 課題番号 |
2002003099 |
| 研究機関名 |
森林総合研究所
|
| 研究分担 |
森林総合研究所 関・T長(野生鳥獣類管理)
|
| 研究期間 |
完了2001~2002 |
| 年度 |
2002 |
| 摘要 |
当年度の試験研究方法:奈良県大台ヶ原の森林におけるニホンジカやミヤコザサなどの実験的除去にともなう植生、動物相、土壌の性質等の変化についての6年間にわたるモニタリング調査、および、シカ密度の異なる場所での植生や鳥群集の違いについての比較調査によって生物間相互作用ネットワークを明らかにし、それに基づいて、シカ個体数やササ現存量の管理が生態系の動態に及ぼす効果を予測できるシミュレーション・モデルを構築した。ミヤコザサは、ほぼ一年サイクルで、葉と稈の生産と枯死をくりかえした。大台ヶ原には、平均で20-30頭/km2のニホンジカが生息しており、積雪期をのぞいて、餌の大部分をミヤコザサに依存していた。シカの個体数とササの地上部現存量は、現在、ともに安定していることから、両者の関係は平衡状態にあると考えられた。ところが、シカの除去区では、地上部現存量がわずか5年間で8倍近くまで増加して回復した。シカによって食べられなかったササはリターとして、シカによって食べられたササは死体や糞尿として土壌にかえり、それが養分として、再びササに吸収される。このシカ?ササ?土壌の間の窒素循環の動態についてのシミュレーションモデルを、実際に野外で得たデータをもとに作成した。さらに、このモデルを拡張させて、シカ個体数増加にともなうササ現存量の減少や枯死木の増加が、樹木実生、鳥類、地表節足動物、土壌動物の個体数や多様性に及ぼす影響についての調査結果を組みこんだ。結果の意義:すべての生物群にとって好ましいニホンジカ密度やミヤコザサ現存量は存在しなかった。しかし、個体数や多様性に与える両要因の影響は、鳥や節足動物などの動物に対するよりも、樹木やその実生に対して大きかったため、生態系管理の目標を、生物多様性を最大化することではなく、樹木の枯死の減少と天然更新の増加によって森林の再生を促進することにおいて、検討した。森林が再生されれば、結果的に動物の多様性をも高めることができる。シミュレーションの結果、シカを現在の密度のまま放置すると、更新の阻害と樹木の枯死によって森林は衰退の一途をたどることが予測されるため、シカの駆除を早急に行う必要がある。ところが、駆除によってシカの個体数が減少すると、現在のササ現存量との平衡関係が崩れて、成長速度の大きいミヤコザサの現存量が最大値近くまで回復するために、天然更新が進まなくなることが予測された。また、駆除を中断すると、シカの個体数とササ現存量の間にサイクル変動が生じることや、シカを直接駆除しなくても、ササの刈り取りによってシカの個体数を抑えることができることなどが予測された。したがって、大台ヶ原の森林生態系を修復するためには、シカの個体数調整とササの刈り取りを同時にかつ継続的に行いながら、この成果をシンポジウム等で明らかにすると共に環境省への提言を行う。それぞれを適正な密度に維持していく必要があり、本モデルによって、そのための方策を提示することが可能になった。
|
| カテゴリ |
くり
シカ
モニタリング
|