森林の分断化が森林群落の動態及び多様性に与える影響の解明

課題名 森林の分断化が森林群落の動態及び多様性に与える影響の解明
課題番号 2003004304
研究機関名 森林総合研究所
研究分担 森林総合研究所
研究期間 継続2001~2005
年度 2003
摘要 森林の分断化が森林群落の動態と多様性に与える影響の解明当年度の試験研究方法:関東平野北部の茨城県里美村及び北茨城市の中山間地帯において、スギ林と広葉樹林の両森林タイプについて林齢別の調査地を設定した。森林構造、植生データをライントランセクト法で調査した。幅10m、長さ100mのライントランセクトをとり、胸高直径5cm以上のすべての木本植物のサイズと種名、高さ2m以上のすべての木本植物の種名、1m2のサブコドラート(40個)に出現する林床植生の種名を調査・記載した。分断化と植物の繁殖効率の関係を解析する樹種としてイタヤカエデを選び、成熟林分と分断化した保残帯で繁殖個体の分布図を作成した。開花フェノロジーと花の性表現を調べた。17個体から種子を採取し、しいな率、腐りや虫害種子の割合を調べた。小川試験地の林床(1ha)において、殻つき生落花生と生サツマイモを餌として、春(4月末)と秋(10月末)に連続3晩(調査努力量273トラップ日)の記号放逐法によるネズミ類の個体数調査を行った。また、上記捕獲調査地の中心部(0.17ha)の林床に61個の埋設式巣箱を設置し、巣箱内に残された種子破片を回収した。当年度の研究成果:林齢の変化に対応した出現種数の変化パターンは、2m以上の木本種については、広葉樹林とスギ林で異なった。広葉樹林では、伐採後しばらくして最大になり、その後穏やかに減少した。他方、スギ林では、伐採後10年程度で除伐を受ける前に最大となり、その後林冠の閉鎖とともに急速に減少し、その後増加した。胸高直径5cm以上の樹木種数は、広葉樹林では林齢の増加とともに増加するが、スギ林では一貫して少ない。保残帯として断片化した林分でもイタヤカエデの密度が高い場所とひくい場所があった(4-108本/ha)。雄花雌花の開花パターンも複雑で、雌―雄、雄―雌、雄―雌―雄、雄のみの4つのパターンの個体がみられた。繁殖個体の局所密度が高いところでは有意にしいな率が低下したが、腐り率は逆に高くなった。虫害率は密度とは相関が見られなかった。最終的な健全種子の割合は大きな個体ほど有意に高かった。このように人工林化によって分断した保残帯でも繁殖個体密度は異なり、花の性表現も複雑で、単純に分断化、繁殖個体の低密度化、結実率の低下という図式にはならないことが明らかになった。小川試験地の林床ではネズミ類2種(アカネズミ、ヒメネズミ)が捕獲された。ネズミ類の捕獲個体数は、調査開始時点H10秋のアカネズミ9個体、ヒメネズミ5個体からH12秋まで漸減した。H12秋にブナ類の大量結実し、翌H13春には、ネズミ類の個体数は回復し、アカネズミ10個体、ヒメネズミ5個体が捕獲された、その後、ネズミ類の個体数は漸減し、H14年秋の捕獲個体数はアカネズミ1個体、ヒメネズミ捕獲なしとなったが、15年には再び回復した。以上より、ブナ類の豊作がネズミ類の冬期の死亡率の低下や繁殖期間の延長に寄与し、ブナ類の豊作年の翌年にはネズミ類の生息密度が高まると考えられた。逆に、ブナの不作年にはネズミの生息密度は低下し、不作年が連続することによって、生息密度が低く保たれると言える。埋設式巣箱はアカネズミ、ヒメネズミ両種の利用が確認された。埋設式巣箱の内容物は、ブナ類の豊作年(H12)冬期には巣箱あたり平均3.92g、ブナ類の不作年(H13)冬期には平均0.99gであった。利用樹種は、重量ベースの優占順に、H12はコナラ類64%、ブナ類36%であったが、H13はコナラ92%、サクラ類4%、ブナ類2%、ハクウンボク1%、クリ1%であった。
カテゴリ かえで くり さくら 中山間地域 繁殖性改善

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