課題名 |
屋久島森林生態系の固有樹種と遺伝的多様性の保全条件の解明 |
課題番号 |
2003004312 |
研究機関名 |
森林総合研究所
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研究分担 |
森林総合研究所
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研究期間 |
継続2001~2005 |
年度 |
2003 |
摘要 |
屋久島森林生態系の固有樹種と遺伝的多様性の保全条件の解明当年度の試験研究方法:1)4haのヤクスギ試験地においてSSR遺伝子座を用いて遺伝的多様性を調査する。約400年前の伐採と考えられる切株からDNAを抽出し、前世代と現世代の間の多様性を比較する。2)20mごとの測量杭を起点に、30個の2x2m方形区を作り、胸高直径5cm以下の稚樹を調査する。同時に開空度、基質割合、植被率を目視で記載し、全天写真を撮る。3)DGPSとコンパス測量を併用してヤクタネゴヨウ成木の分布位置の記録を行い、GISによる分布特性を解析する。枯損の発生状況と要因を明らかにするためにモニタリング調査を行う。 4)屋久島西部林道の2つの調査区において、雌雄花別開花および結実数、球果受粉率および種子充実率を調査する。遺伝子流動を明らかにするための分子マーカーの検索を行う。5)組織培養等による植物体の再生・増殖の試験を行い、未熟種子や成熟種子からの液体培養や寒天培養で、不定胚の誘導条件やそれからの成熟条件について検討する。6)西部林道沿いの尾根に新たに設置した5方形区において、ヤクタネゴヨウ林分の構造を調査し、各樹種の個体分布と立地との関係を解析する。当年度の研究成果:1)4ha試験地の過去集団である切株について、110本からDNA抽出とPCR増幅を試みたが、約1/5の個体からPCR増幅に成功し遺伝子型を決定した。平均ヘテロ接合度(観察値)、対立遺伝子多様度はそれぞれHo=0.665、Ar=14.81であった。4ha試験地の現世集団のデータが解析中のため、近隣集団(Ho=0.738、Ar=14.74)との比較を行い、過去の森林もほぼ同程度の遺伝的多様性を保持していたことが明らかとなった。2)ハイノキ、シロダモ、スギなど毎木調査で優占する樹種を中心に12種の稚樹を確認した。特にスギは、切り株や倒木など土壌以外の基質に出現した。しかも2m以下の小さな稚樹であった。林冠はほぼ閉鎖し、稚樹調査域(80mx120m)でのスギの更新は、現状では困難である。スギ稚樹は局在するため、さらに広範囲で調査する必要がある。 3)西部林道の調査地域内において、新たに22個体の成木を確認した。50mメッシュで区切ってGISによる解析を試みたが、ヤクタネゴヨウの明瞭な分布特性は抽出できなかった。モニタリングを行っている4サイト(尾根)における枯損はみられなかった。4)西部林道の2調査区において、plot1では全個体で雌雄花の着生が見られたが、plot2では開花個体が雄花43%、雌花71%であった。また、試験区内12個体の樹冠下に設置したトラップに落下した雄花と種子数の平均は、森林管理署構内の植栽個体に比べ雄花で約2割、種子は3割と低い値を示し、種子生産が活発に行われていない実態が示された。5)鹿児島県林試の接木個体と、屋久島自生個体から誘導した2つの不定胚形成細胞の系統について、ポリエチレングリコールやグルタミン、ABA等を添加した固形培地で培養することにより不定胚形成細胞の成熟技術を開発した。屋久島西部林道産の8月下旬採取の成熟種子材料からの組織培養により1/2DCR培地で、不定芽を誘導させることに成功した。6)ヤクタネゴヨウ林分における個体分布と立地との関係について、樹高1.3m以上の個体ではヤクタネゴヨウと他の数樹種は岩上の立地と結びついた分布を示したが、1.3m未満の個体でヤクタネゴヨウを含めた主要樹種に岩上の立地と結びつきは無かった。このことからヤクタネゴヨウは他の照葉樹が成長しにくい岩上の立地に適応している可能性を提示した。
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カテゴリ |
GPS
受粉
モニタリング
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