斜面スケールでの水分環境変動と主要元素の動態の解明

課題名 斜面スケールでの水分環境変動と主要元素の動態の解明
課題番号 2003004313
研究機関名 森林総合研究所
研究分担 森林総合研究所
研究期間 継続2001~2005
年度 2003
摘要 斜面スケールでの水分環境変動と主要元素の動態の解明当年度の試験研究方法:八溝山地において採取した土壌-風化層-基岩の試料について、蛍光X線分析を用いて主要元素の含有率を測定し、さらに含有量を算出した。これらの結果に基づき、各元素の垂直方向の変化を定量化し、地質別の特徴、共通点などを類型化した。桂試験地斜面上部・中部・下部の3地点の深度90cmに設置したポーラスプレートテンションライシメータを用いて採取した土壌水の溶存成分濃度を測定し、その結果をもとに溶存成分の鉛直一次元フラックスを算出した。試料の採取は4月中旬以降、原則として1週間に1度の頻度で実施した。筑波共同試験地森林理水流域B湧水点において、渓流水、雨水の溶存成分濃度の測定を月2回の頻度で開始し、季節変動を解析するとともに、流出量を概算した。2000年三宅島噴出物について逐次水抽出試験を行い、抽出水の溶存成分濃度の変化を解析するとともに、含有する石膏の消長をX線回折分析によって解明した。当年度の研究成果:土壌-風化断面における各元素の含有率は、表層から下層に向かって、SiおよびCa、Mg、Na、Kのアルカリ元素の含有率が減少するのに対して、Al、Fe、Tiの含有率は増加する傾向が認められた。これは、化学的風化に伴ってSiやアルカリ元素が溶脱されて、溶脱されにくいAl、Fe、Tiの含有率が相対的に増加したことを示している。地質別に表層から下層に向かっての各元素の含有率の変化には違いが認められ、花崗岩ではほぼ一定に減少、もしくは増加する傾向を示したのに対して、中古生層堆積岩および変成岩では、増減を繰り返しながら、次第に減少、もしくは増加する傾向を示した。このことは、中古生層堆積岩・変成岩では、化学的風化が鉛直方向に進行しただけではなく、基岩中に発達する層理や節理に沿っても進行したことを示している。桂試験地における4月から12月までの9ヶ月間における深度90cmにおける土壌水のフラックスは、斜面上部で215mm、中部で481mm、下部で506mmであった。同期間の流出量と比較すると、斜面中・下部ではほぼ同じ値を示したが、斜面上部では40%程度の値であった。無機態窒素のフラックスは、斜面上部で0.01 kgN ha-1と低い値を示したが、中部では3 kgN ha-1と流出量とほぼ同等の値を示し、斜面下部では28 kgN ha-1と著しく高い値を示した。筑波共同試験地森林理水流域B湧水点では、渓流水の硝酸イオン濃度が梅雨時と秋雨時に高い値を示し、また、硫酸イオン濃度、Ca濃度が冬にやや高くなる季節変動を示した。一方、Si濃度、Mg濃度には顕著な変動は認められなかった。年降水量1300mmに対して年蒸発散量を700 mm、年流出量を600 mmと仮定し、渓流水の平均濃度をSiは9 mg L-1、Caは2.5 mg L-1、Mgは0.9 mg L-1として概算すると、年流出量はSiは54 kg ha-1、Caは15 kg ha-1、Mgは5.4 kg ha-1と算出された。2000年三宅島噴出物の水抽出液(試料:水=1:5)はCa濃度が500 mg L-1、硫酸イオン濃度が1500 mg L-1以上の値を示し、石膏(硫酸カルシウム)で飽和されていた。試料を逐次抽出すると、2000年の堆積直後ならびに2001年秋に採取した試料の大半は、2~3回程度の抽出では石膏の消失は起こらず、Ca、硫酸イオン濃度の低下のためには5回程度の繰り返しが必要であった。一方、一部の2001年秋の試料、ならびに2002年秋に採取した試料は、初回から濃度が低下する傾向が認められた。このことは噴火後2年程度の間に雨水によって溶出が進み、土壌の化学的性質が改善されていることを示している。
カテゴリ 季節変動

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