森林流域における水循環過程の解明

課題名 森林流域における水循環過程の解明
課題番号 2003004325
研究機関名 森林総合研究所
研究分担 森林総合研究所
研究期間 継続2001~2005
年度 2003
摘要 森林流域における水循環過程の解明当年度の試験研究方法:茨城県北部常陸太田試験地内の集水面積の異なる2流域,HA(0.84 ha:HB流域の源頭部)とHB(2.48 ha)で自動採水装置を使用し、降雨中の河川水を1~2時間間隔で採水し、集水面積、先行降雨条件に関する解析を行った。また、本流域を対象に、TOPMODELを用いて流出発生域の特性を検討した。また、筑波水文試験地においても量水、採水、土砂流出の観測を進めた。さらに、宝川森林理水試験地に流出モデルを適用した。当年度の研究成果:採水した水の酸素および水素安定同位体比より、降雨中の河川水を降雨成分('新しい水')と降雨以前から流域に存在していた地中水の成分('古い水')の2成分に分離した。36出水に対して、このような成分分離を行い、'古い水'と集水面積、先行降雨量および先行降雨量を含めた総降雨量との関係をそれぞれもとめた。その結果、降雨中の河川水に占める'古い水'の割合は集水面積の小さいHA流域でHB流域よりも多いことが明らかになった。先行降雨量を含めた総降雨量が大きいほど'古い水'の割合が小さくなることが明らかになった。流域全体(HB)の流出量が低い時期になると、相対的に大きなサブ集水域(HA)の流出量は全体の流量に比例して減少するだけであるが、HZの流出量は間歇的になった。本流域にTOPMODELを適用し、検証すると0次谷流域(HZ)の流量が間歇的になる点を正しく推定できていないことが明らかになった。これは地理情報に基づいて水移動を予測する本モデルには日本のように比較的長期にわたり無降雨が続くことのある流域への適用の場合、毛管水等の挙動を考慮した要素を必要とすると考えられた。筑波森林水文試験地においても、降水1地点、渓流流出水1地点、湧水3地点、地下水6地点において2週間に1回の頻度で採水し、順次、質量分析器を使用して酸素、水素安定同位体比を測定した。降水の年加重値は渓流流出水や湧水の平均値にほぼ等しいことが分かった。このことから当試験地における地下水涵養過程での蒸発による同位体比濃縮はほとんど無視できると考えられた。2002年における年降水量は1235mm、年流出量は405.9mmであり、両者の差である損失量は829.1mmであった。過去の観測結果の中で1987年の結果(年降水量1257mm、年流出量385.4mm、損失量871.6mm)と類似していた。また、浮遊土砂についても定期的な採取と自動採水器による測定を併用した。宝川森林理水試験地本流流域、初沢および1号沢において量水観測を行い、流量の時系列データを収集した。毎月、各流域で河川水を採水した。冬期は観測基地において融雪ライシメータから排出される水を200Lタンクに貯留して融雪水を採水した。積雪に鉛直断面を掘り、密度と同位体分析用に地面から20cm毎に表層まで雪を採取した。土砂量の定量的把握をするため、定期的に河川水を採水するとともに、出水中の河川水を自動採水装置により採水して集めた水の浮流砂濃度を測定した。本流域に準分布型のモデルであるTOPMODELを適用するための準備として、地形指数のヒストグラムを求めた。地形地形指数は、αを単位等高線長さあたりの集水面積、βを斜面傾斜として、ln(α/tanβ)と表される。東京営林局作成の2万分の1地形図から50mメッシュのDEMを作成した。このDEMより地形地形指数を計算し、そのヒストグラムを求めた。1997年7月17-日から18日にかけての降雨にTOPMODELを適用した。この結果、流出量は実測値とよく一致した。また、降雨以前は河川付近のみ飽和しているが、流出ピーク時には、流域の斜面上部にまで飽和域が拡大しており、降雨にともなう地下水面の変動の様子が明らかになった。
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