課題名 |
森林流域における窒素等の動態と収支の解明 |
課題番号 |
2003004328 |
研究機関名 |
森林総合研究所
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研究分担 |
森林総合研究所
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研究期間 |
継続2001~2005 |
年度 |
2003 |
摘要 |
森林流域における窒素等の動態と収支の解明当年度の試験研究方法:宝川試験地本流観測点(1905.6ha)において、自動採水装置によって融雪時期に1日に2ないしは3回の頻度で試料を採取し、溶存成分濃度を測定した。流量が計測されている流域(去川1号沢・2号沢、3号沢、西川、山城、桂、宝川試験地)で得られた水質データを収集、整理し、窒素、珪素について年流出量を算出した。桂試験地(2.3ha)では、間伐予定のスギ林、間伐しないスギ林(対照区)、広葉樹林に新たに試験区を設置し、窒素の植物による固定量、埋設バッグ法による月間現地無機化量を測定した。また、リターバックを用いて窒素固定活性を、チャンバー法によりN2Oの発生量を測定した。継続して降水量、流出量の測定を行うとともに、溶存成分濃度を測定し、降雨による窒素流入量ならびに窒素流出量を測定した。なお、桂試験地の中のスギ林(1.0 ha)において間伐を平成15年12月に実施した。当年度の研究成果:宝川試験地本流観測点では、積雪期には溶存成分濃度が徐々に上昇するのに対して、融雪開始時期にはNO3、Cl濃度が上昇し、Si、SO4濃度が低下する変化が認められた。融雪期中期以降は全成分濃度が低下し、夏期に上昇する傾向が認められた。去川1号沢、西川、山城、桂、宝川試験地におけるN流出量は去川1号沢の8.9 kgN ha-1を除くと、概ね2~6 kgN ha-1であり、降水による負荷量よりは低い値を示した。一方、Siの流出量は西南日本の去川、西川で100 kg ha-1以上の値を示したが、山城、桂、宝川では30~50 kg ha-1程度の値を示した。桂試験地における樹木中の窒素(N)現存量は、スギ林(対照区)で700±170 kgN ha-1、スギ林(間伐区)で654±68 kgN ha-1、広葉樹林で749±329 kgN ha-1、3月から11月にかけての樹木によるN固定量は、スギ林(対照区)で23±4 kgN ha-1、スギ林(間伐区)で22±4 kgN ha-1、広葉樹林で20±21 kgN ha-1と算出された。4月から11月にかけての月間現地窒素無機化量は、表層0~5cmで20~110 mgN kg-1であったが、30~35cmではその1/10~1/40程度の低い値を示した。月間現地無機化量は夏季に大きく、多くの地点で8月にピークが見られた。無機化量の内訳は、スギ林では硝酸態がほとんどを占め、広葉樹林ではアンモニア態がほとんどを占めた。窒素固定活性は、スギ落葉にのみにおいて見られ、アカマツやコナラの落葉では認められなかった。スギ落葉をコナラ林に設置しても、スギ林と同様に窒素固定活性は認められたが、スギ林の場合のほうが、コナラ林より早い時期に窒素固定活性が上昇した。N2Oの発生速度は谷底が最大で、斜面中腹、尾根部の順に小さくなる傾向が見られた。測定期間中のN2O発生速度の平均値は、谷底で約0.3 kgN ha-1、斜面中腹で約0.2 kgN ha-1、尾根部で約0.1 kgN ha-1であった。桂試験地における2003年の年降水量および年流出量は、それぞれ、1423.5mm、740.6mmであった。降水による窒素の流入負荷量は、7.2 kgN ha-1であり、渓流水における溶存態としての流出負荷量は、2.54 kgN ha-1であった。これらの値は2001年、2002年の結果と大きな差はなかった。
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