課題名 |
森林群落内部における熱・CO2輸送過程の解明 |
課題番号 |
2003004330 |
研究機関名 |
森林総合研究所
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研究分担 |
森林総合研究所
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研究期間 |
継続2001~2005 |
年度 |
2003 |
摘要 |
森林群落内部における熱・CO2輸送過程の解明とモデル化当年度の試験研究方法:LESモデルを用いて水平一様な植物キャノピー層を含む中立接地境界層における乱流の3次元シミュレーションを行い、従来の観測データとの比較によりモデルの妥当性を検証するとともに、植物群落上のスカラーフラックスに寄与する乱流の空間構造に関する解析を行う。川越森林気象試験地において、林床からのCO2放出量空間分布測定、CO2放出量に関係する土壌内CO2濃度、体積含水率、拡散係数の測定を行い、林床からのCO2放出量の空間代表性を解析する。札幌森林気象試験地の積雪期において、雪面からのCO2フラックスを濃度拡散法によって測定する。そのため、積雪上下面のCO2濃度・積雪深・積雪層の気相率等の測定を行う。当年度の研究成果:シミュレーションによって得られた乱流の各種統計量や、群落上に形成される組織乱流の空間構造などが従来の観測データと整合的であることが判明し、モデルの妥当性が確認された。また、群落上のスカラーフラックスには、流れ方向に長く延びたいわゆる「ストリーク構造」をもつ組織乱流が大きく寄与しており、従来から知られている群落上端における変曲点不安定に起因する渦構造よりも重要な寄与を持つことが明らかとなった。林床面CO2放出量に影響する土壌内CO2濃度、体積含水率、拡散係数の空間変動係数はいずれも大きく、これらの要因が複雑に関係した結果であるCO2放出量は、非常に大きな変動係数を示す日があった。CO2濃度、拡散係数、土壌水分などはそれぞれ複雑に影響しあうため、個別要素とCO2放出量との相関は低かった。CO2放出量は空間変動の大きいので、測定点の選定の仕方によって空間平均値は大きな差が生じる可能性があった。しかし、長期間測定した地温とCO2放出量の関係は指数関数でよく近似され、長期間の観測データをもとにした空間平均値は、真値に近い値が得られると考えられた。札幌森林気象試験地において、積雪上下面のCO2濃度・積雪深・積雪層の気相率等の測定を行った。これらの測定結果を用いて鉛直一次元の濃度拡散法を適用すると雪面から放出されるCO2は1月~3月の平均で1.8 gCO2 m-2 d-1であった。今回用いた手法には積雪中のCO2の移動が鉛直方向の濃度勾配のみに依存すること、および積雪中に均一な濃度勾配が生じていることが仮定条件として含まれている。しかし、現実には積雪中の密度分布やCO2の濃度分布は鉛直方向、水平方向に不均一であることから3次元の濃度拡散が引き起こされていると考えられる。加えて、地表風によるポンピング(Massman et al., 1997;高木ら, 2002)など濃度拡散以外の作用も指摘されている。これらのことから、現在の推定値はさらに高精度化を図る必要がある。
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カテゴリ |
カラー
輸送
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