湿雪なだれの危険度評価手法の開発

課題名 湿雪なだれの危険度評価手法の開発
課題番号 2003004333
研究機関名 森林総合研究所
研究分担 森林総合研究所
研究期間 継続2001~2005
年度 2003
摘要 湿雪なだれの危険度評価手法の開発当年度の試験研究方法:長野県安曇村で発生したなだれについて,現地調査の結果と収集した気象データ(アメダスデータと同等のスキー場における一般気象データ)に基づいてなだれ発生に至った気象と積雪条件を解析した。融雪量推定モデルについては次の2点の改良を試みるとともに、降水量の捕捉率について検討した。1)粘性係数:密度が200 kg/cm3より小さい雪では従来どおり密度のべき乗に比例するとし、200 kg/cm3より大きい雪では篠島(1967)の式を用いて密度の指数関数で表わした。2) 地面融雪量:十日町試験地での実測値にもとづいて、積雪底面の融雪量を融雪量推定モデルに入力し、計算結果への影響を調べた。当年度の研究成果:長野県安曇村で2003年1月5日に発生したなだれの現地調査と気象データの収集・解析を行なった。なだれは乗鞍スーパー林道上方約50 mの林内(斜度43°,標高1700 m)で発生し、樹間を抜けて林道まで達したことがわかった。断面観測の結果、雪面から約30 cm下にこしもざらめ層があり、なだれの破断面の位置と一致した。安定度は1.5未満と小さかった。この層は、1月1日の夜から2日の朝にかけて積もった雪が3日早朝の低温下でこしもざらめに変質したものと推測され、その上に4日から5日にかけて多量の雪が積もったために表層なだれが発生したと考えられる。この事例は乾雪なだれであったが、解析手法は湿雪なだれにも応用できる。この調査結果は従来比較的安全と考えられてきた林内でのなだれ発生条件を知るためのデータとして意義深いものである。融雪量推定モデルについては計算精度を向上させるために改良を行なった。これまでは、粘性係数は雪の乾き密度のべき乗に比例すると仮定した。つまり、密度が小さい雪では粘性係数を過大に、密度が大きな下層の雪では過小評価していると予想された。そこで、密度200 kg/cm3を境にこれより小さい雪では従来どおり密度のべき乗に比例するとし、大きい雪では密度の指数関数(篠島,1967)で表わした。さらに、これまで加味しなかった積雪底面融雪量を考慮した結果、1~2月の日流出高が実測値に一致するようになり、積雪層の沈降曲線も実測値に近づくことがわかった。入力値である降水量の捕捉率については、十日町試験地の10冬期分のデータを調べた結果、捕捉率を風速の関数にした場合と0.9に固定した場合の冬期総降水量の差は3-7%であり、0.9に固定しても問題ないといえる。ただし、広域に応用する際には、風速を考慮した捕捉率にする必要がある。積雪は,融雪水や雨水が浸透して濡れたざらめ雪になると、急激にせん断強度が低下し、なだれの発生要因になることが多い。しかし,降雨量と違って、融雪量を自動計測する装置はない。本研究成果は、アメダス観測地点のデータで融雪量を推定し、防災に役立てるという意義をもつ。
カテゴリ 自動計測

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