ニホンジカの密度管理技術の開発と植生への影響

課題名 ニホンジカの密度管理技術の開発と植生への影響
課題番号 2003004342
研究機関名 森林総合研究所
研究分担 森林総合研究所
研究期間 継続2001~2005
年度 2003
摘要 ニホンジカの密度管理技術の開発と植生への影響当年度の試験研究方法:行動追跡はVHF発信器およびGPS受信器付首輪をニホンジカに装着し、北海道東部と九州中央山地で調査を行った。北海道東部では2003年3月に8頭(オス3頭、メス5頭)にGPS首輪を装着し、4月から11月まで自動記録された位置データを遠隔回収した。九州中央山地では12頭(オス4頭、メス8頭)について毎週手動で位置を確認した。さらに、軽飛行機を利用した位置確認方法についても検討した。植生への影響評価は日光および大型実験柵(茨城森林管理署)で調査した。日光では環境省が奥日光戦場ヶ原に設置した大型シカ防護柵内に3ヶ所、防護柵外の奥日光、表日光地域に8ヶ所の調査区を設置し、ミヤコザサ群落の地上部現存量を測定した。大型実験柵ではシカ排除区、低密度区(4頭/平方キロメートル)、高密度区(16頭/平方キロメートル)で林床植生現存量、造林木へのシカ害調査、生枝下高等を測定した。捕獲個体の経年比較では、熊本県八代・球磨郡内9町村で1994~2000年度の2~3月に捕獲された個体の内2272頭の年齢を査定し、年指標の経時的な変化を比較した。被害予測手法確立のための情報の解析では、被害調査データのGISデータベースを作成した。また、ニホンジカの森林被害箇所と生息密度調査箇所との関係について空間パターンを分析した。当年度の研究成果:行動追跡では南北地域で行動パターンに違いが見られた。北海道東部では3月に捕獲されたシカは4月下旬に移動を開始し5月7日までに夏の生息地に到着した。移動距離は32.3~58.1kmであった。この内1個体は、10月下旬~11月上旬に越冬地(放逐地点付近)に戻った。GPS受信器は6ヶ月間で1261点の位置データを取得し測位成功率は80.8%であった。全期間を通じて針葉樹植林地及び落葉広葉樹林の利用が多かったが、8~10月に牧草地の利用が著しく増加し、11~12月には針広混交林の利用割合が高くなった。また、8~10月には夜間に農地を日中に森林を利用していた。九州中央山地ではメスの多くが定住型であった。移動型のメス2頭も毎年同じ滞在地の間を往復し、再帰性があることが確認された。対照的に、オスの多くは季節毎に異なる滞在地を移動していた。ほとんどの個体は毎年ほぼ同じ滞在地の間を往復したが、一部の個体は3カ所以上の季節的滞在地を持っていた。また、今回新たに考案した受信系統は航空機を用いた位置確認調査に有用であった。 植生への影響では、ニホンジカの採食頻度に応じてミヤコザサの現存量や形態が異なることが分かった。採食頻度の高い表日光では、奥日光に比べミヤコザサの現存量は低く、新稈(茎部)の割合が高かった。また、新稈密度と稈長との間には負の相関が認められ、シカの採食影響下ではミヤコザサの新稈密度は高く、稈長は短かった。大型実験柵ではミヤコザサおよびアズマザサの新稈に対する採食選択性が非常に高いことが確認され、シカ排除区、低密度区、高密度区間で林床植生量および植栽木被害に差が生じていた。導入後1年を経過して林床植生の種組成や種の多様性に顕著な変化は認められないが、採食植物数は増加しており、特に落葉が重要な採食アイテムとなっていた。高密度区ではディアライン形成の最初の徴候が捉えられた。低密度区、高密度区ともスギ・ヒノキの双方に被害が発生したが被害率は低密度区の方が高かった。糞分布はシカの土地利用頻度を反映していたが、糞消失率は植生によって異なり、伐採地,広葉樹林,針葉樹林の順に高かった。捕獲個体の経年比較では、捕獲数の増加にともない捕獲個体の若齢化が進行していた。1994~2000年度の間に熊本県におけるメスジカ捕獲数は85頭から1496頭に増加し、メスの捕獲個体に占める0才メスの割合は8.4%から29.3%に上昇した。また、1才メスと2才以上のメスの比率は0.9から2.4に上昇した。一方、1才以上のメスの妊娠率は82.3%から92.2%で推移し年度間で違いは見られなかったため、熊本県ではメスの死亡率が高くなりつつあることが分かった。GISを応用した区画法ならびに相互最近隣距離法を用いて、福岡県英彦山周辺地域における森林被害箇所と生息密度調査箇所の空間パターンを分析した。この結果、生息密度調査地点と被害箇所とは近接している傾向を持ちオーバーレイ解析に適していることが分かった。また、区画法による検定法の一手法であるMorisitaの指数により被害発生箇所と被害未発生箇所との関係を分析した結果、両者とも凝集型の分布傾向を示し、それぞれは塊状になって分布していることが分かった。
カテゴリ 病害虫 管理技術 GPS シカ 自動記録 データベース 防護柵 防除

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