課題名 |
択伐を主とした天然林の施業・管理技術の高度化 |
課題番号 |
2003004352 |
研究機関名 |
森林総合研究所
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研究分担 |
森林総合研究所
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研究期間 |
継続2001~2005 |
年度 |
2003 |
摘要 |
択伐を主とした天然林の施業・管理技術の高度化当年度の試験研究方法:1)枝幸、幾寅、留辺蘂、弟子屈試験地4箇所(各1.0ha)における40~50年間の長期観察データを用いて、無施業天然林の長期動態の特徴を解析した。また、各試験地において最近25~32年間に発生した枯死木の形態等を解析した。2)1999年に奥定山渓国有林において取得したLIDARデータを用いて、地表高と林冠高を求めた。また、1997年に空中写真判読した林型区分を林分の単位として、林分内の林冠高垂直分布をもとに樹高の分布を推定した。3)幾寅試験地の択伐区および無施業保存区における腐朽菌菌類相について、腐朽菌類の種類および出現頻度について調査・解析を行った。択伐区については択伐直後の調査を行って、択伐前の腐朽菌が残存しているかどうか、また新規に発生した腐朽菌を調査した。当年度の研究成果:1)4試験地の蓄積の推移をみると、枝幸では部分的な風倒により一時減少したがその後回復し、全体的に見れば蓄積は4試験地とも400m3/haの高い蓄積でほぼ横這い傾向を示した。また、純成長量の推移をみると、0を挟んで上下する傾向がみられ、4試験地の40~50年間をトータルでみると、0~1m3/ha・yr程度でほぼ生立木成長量と枯損量が釣り合った状態にあった。これらは、大規模な攪乱が無い天然林動態の一般的な特徴とみられる。この結果は、択伐林との動態を比較検討するための重要な情報である。4試験地の最近25~32年間に発生した胸高直径30cm以上の枯死木の現在の形態を解析した。その結果、4試験地全体でみると、根返りが20%で、立枯れは9%だった。また、樹種別にみると、根返りはトドマツが最も多く、次いでエゾマツで広葉樹は少なかった。択伐林ではほとんど消滅する立枯れ木や倒木は森林生態系に重要な役割を果たしており、極めて貴重な定量的情報である。2)1999年取得の奥定山渓国有林におけるLIDARデータを用いて、地形学での切谷面算出手法を応用した地表高推定を行った。その結果、ササ高を拾ったと思われる不自然な微高地などが大幅に取り除かれ、自然な地形表現となった。また、この地表高と観測高の差として各点での林冠高を求め、林冠分布状態を推定した。その結果、どの林分においても地表面を表す林冠高0付近の分布と、実際の林冠面を表す1ないし2つの正規分布によりよく近似された。これらの林分はそれぞれ単層または2層の林冠面をもつと考えられた。これらの結果は、択伐天然林における資源量把握手法の一部となる。3)幾寅試験地における保存区および択伐区の伐採前後のプロット内で確認された腐朽菌の種類と頻度を調査した。保存区は出現種数が26種、伐採前の択伐区は27種でほぼ同じであったが、択伐区においては伐採後16種が消滅した。腐朽菌の消滅は主に伐採木搬出に伴う倒木等の破壊や移動等の物理的かく乱が大きな原因とみられる。一方、伐採後一年で8種が新たに出現した。新しく出現した種には伐採木・枯死木の残枝などに発生する腐朽菌であり、伐採直後はこれらの腐朽菌が利用できる材(基質)が豊富にあるためと考えられた。これらは、択伐施業による生態系への影響の一端を示した成果である。
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カテゴリ |
管理技術
管理システム
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