酸性雨等の森林生態系への影響解析

課題名 酸性雨等の森林生態系への影響解析
課題番号 2003004368
研究機関名 森林総合研究所
研究分担 森林総合研究所
研究期間 継続2001~2005
年度 2003
摘要 酸性雨等の森林生態系への影響解析当年度の試験研究方法:1)酸性雨等の森林・渓流への影響モニタリング(交付金プロ・影響モニタリング)全国8箇所のモニタリングセンターステーションにおいて、降水の酸性度・溶存成分等の観測を行った。水源流域における渓流水質及び水量のモニタリングを実施した。3)流域におけるイオウの循環プロセスの解明(環境省受託費・物質循環調査)AndisolsとInceptisolsにおける硫黄化合物の安定同位体比を調べ、これらの土壌中で現存量の多い硫黄画分の挙動が異なっているかどうかを解析した。4)黄砂が森林生態系に及ぼす影響解析のための基礎研究(一般研究費)フィルターパック法によるエアロゾルの採取時の吸引速度と吸引日数について検討した。5)黄砂の森林への影響評価と乾性降下物の起源・寄与率の推定(科研費・黄砂影響)フィルターパック法による乾性降下物(エアロゾルとガス状物質)の採取をコジイ林で通年行った。当年度の研究成果:各調査地の降水のpHとEC(μS/cm)の平均値は、それぞれ以下に示す通りである。北海道・羊ヶ丘ではpHが4.7、ECは35、東北・姫神ではpHが4.9、ECは13、釜淵ではpHが4.6、ECは29、関東・つくばではpHが4.6、ECは28、木曽・試験地構内ではpHが5.0、ECは10、王滝ではpHが4.9、ECは8、関西・支所構内でpHが4.7、ECは17、山城ではpHが4.8、ECは11、九州・立田山ではpHが4.6、ECは15などの値を示し、いずれも例年と大きく異なるところはなかった。多少値の変化が認められたところでは、降水量の違いの影響などが原因として考えられた。昨年は各地で黄砂の影響によって降水の性質が大きく変化する現象が認められたが、今年はその影響は顕著ではなく、東北の2試験地において4月に黄砂の影響と推定されるカルシウムイオン濃度の上昇がみられたほか、北海道で春先にpHがやや高い値を示した程度であった。渓流水のpH、EC(μS/cm)の平均値は、北海道・定山渓ではpHが7.0、ECは25、東北・姫神ではpHが7.2、ECは32、釜淵では1号沢でpHが6.6、ECは60、2号沢でpHが6.7、ECは59、関東・宝川ではpHが6.3、ECは27、木曽・三岳ではpHが7.4、ECは61、開田ではpHが7.1、ECは25、九州・鹿北ではpHが7.0、ECは15などの値を示しており、ほぼ例年通りであった。群馬県本白根山で採取したモミ属枯死木の年輪解析を行った結果、肥大成長量は衰退初期に急激に減少したが、その後の減少は小さく徐々に年輪幅が狭くなっていた。土壌中の硫黄化合物の同位体比の調査では、PO4可溶性S(無機態硫黄画分)のδ34SよりもHI-reducible S(有機態硫黄画分)のδ34Sのほうが大きいという傾向が認められた。表層では、微生物活動によるPO4可溶性SからHI-reducible Sへの形態変化を反映している可能性が考えられる。PO4可溶性Sのδ34Sが深さに伴い徐々に大きくなるという結果は、硫酸イオンが単純に溶脱しているのではなく、生物が関わる反応を繰り返しながら、生成された硫酸イオンが保持されていることを示していると推察した。黄砂を含むエアロゾルの採取法を検討した結果、1日単位での採取には10リットル/分の吸引速度があれば一般成分分析が可能であることがわかった。乾性降下物の季節変化を調査した結果、2003年は九州地方では明瞭な黄砂の飛来が認められず、2002年(最大の黄砂飛来年)の結果では、Ca濃度は黄砂時(3月下旬)には通常の7倍高い値をとる明確な季節変化を示した。
カテゴリ モニタリング

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