課題名 |
森林土壌における有機物の蓄積及び変動過程の解明 |
課題番号 |
2003004376 |
研究機関名 |
森林総合研究所
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研究分担 |
森林総合研究所
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研究期間 |
継続2001~2005 |
年度 |
2003 |
摘要 |
森林土壌における有機物の蓄積及び変動過程の解明当年度の試験研究方法:森林土壌の炭素吸収量評価モデルの開発:1990年代の日本の森林伐採面積のデータを用い、森林伐採が国内の土壌および枯死木の炭素量の変動に及ぼす影響を評価する。従来のIPCC法と枯死木を評価した場合の違いを検討する。森林からのメタン及び亜酸化窒素の放出・排出量の評価:全国16県、49林分に設けた試験地においてメタンと亜酸化窒素の吸収・排出フラックスを測定し、立地要因との関係を解析する。また施業影響を評価するため、間伐または皆伐施業を行う。当年度の研究成果:森林土壌の炭素吸収量評価モデルの開発:気候変動枠組条約における実際の国別報告を想定した土壌および枯死木の炭素変動を検討するため、プロトモデルを作成し1990年代の日本の森林施業の実態に基づく森林土壌と枯死材の変動を評価した。その結果、伐採量が1990年の26万haから2000年には7万haまで減少したため、IPCCガイドラインに沿って伐採をすべて排出としてカウントしても、伐採に伴う排出量は減少し続けた。日本の場合、伐採によるリター量の減少は小さかったが、林地に残される枝条類の変動が大きかった。伐採時の枝条類を考慮すると90年代は枯死有機物による炭素蓄積が大きかった。しかし、この蓄積は伐採の減少と枝条分解の進行により2000年以降は排出に向かうことがわかった。以上の結果は炭素変動には間伐の影響も大きいことを示唆し、切り捨て間伐の場合森林セクター内の枯死材による炭素量評価が重要であることがわかった。なお、モデル計算に必要な土壌タイプ別炭素貯留量は既往データを整理して決定した。そして、これらの値と国土数値情報を利用して日本の森林土壌における炭素貯留量を推定した。森林からのメタン及び亜酸化窒素の放出・排出量の評価:全国16県49試験地でCH4とN2Oフラックスを無積雪期間に毎月観測した。その結果、ほとんどの森林土壌はCH4を吸収しシンクとなっていた。CH4フラックスと緯度や標高、植生とは明瞭な関係が見られなかった。土壌型との関係を見ると、褐色森林土群で乾性BBから弱湿性BEへと土壌が湿潤になるほどCH4吸収フラックスは小さくなる傾向を示した。また黒色土群(BlD, lBlD(d))ではCH4吸収フラックスが大きく、BBやBD(d)に匹敵し、CH4を放出することはほとんど無かった。一方、グライ土や赤と同程度で、一時的にCH4を放出した。N2Oフラックス(mgN2O-N m-2 d-1)の平均値は 0.25、中央値は 0.084であった。この値は検出限界に近く、ほとんどの森林土壌はN2Oを微量しか放出していないことがわかった。また、地温や土壌水分が高いほどフラックスが大きい傾向が見られた。土壌型との関係では、褐色森林土群で乾性型の土壌ほど放出フラックスは小さく、土壌が湿潤になるほどN2O放出フラックスの平均値とその分散が大きくなる傾向が見られた。また黒色土群もフラックスの分散が大きかった。以上からCH4とN2Oのフラックスを決定する要因は、土壌の水湿状態やガス拡散係数が重要であることが示唆された。なお、試験地の7カ所で間伐、5カ所で皆伐処理を行い、施業後のガスフラックス観測を開始した。
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