環境変動が海洋性気候下の寒温帯植生に与える影響の評価

課題名 環境変動が海洋性気候下の寒温帯植生に与える影響の評価
課題番号 2003004378
研究機関名 森林総合研究所
研究分担 森林総合研究所
研究期間 継続2001~2005
年度 2003
摘要 環境変動が海洋性気候下の寒温帯植生に与える影響の評価当年度の試験研究方法:1)寒温帯植生の積雪変動に対する脆弱性評価に関する研究  八幡平地域において1000年前以降のアオモリトドマツの拡大過程を明らかにするために多点で表層試料を採取し花粉を分析した。亜高山帯針葉樹林の樹種構成に及ぼす積雪環境の影響を解明するために、少雪山地の富士山、中間の早池峰山、多雪山地の八幡平で、コメツガとアオモリトドマツの稚樹の定着場所(地表、根元、根張り、倒木)を調べた。積雪推定モデルを改善するために、標高を関数化した降水量分布関数および、気象庁平年値積雪深データから得られた3次メッシュ最大積雪深分布とアメダスデータから得られた平均最大積雪量比分布を導入して解析した。山岳域の積雪分布の推定精度を向上させるために、積雪密度推定モデルを加えることにより積雪水当量分布と積雪深分布の推定を試みた。気象庁による20km解像度地域気候モデル(RCM20)計算結果をもとに気温、降水量、降雪量、風速について1981-2000年の月別平均値と2081-2100年の月別平均値との比較を行った。2)シベリアにおける最終氷期以降の気候と植生  アムール川河口のタイガと広葉樹林の境界域の泥炭試料で概略の花粉分析を行った。また、西シベリア地方でこれまでに採取した試料の粒度分析、CN分析、花粉分析を行った。当年度の研究成果:八幡平地域の花粉分析では、どの地点も1000年前以降にAbies花粉が増加する傾向が同じだった。さらに多様な立地環境の分析地点の調査が必要である。北上山地の青松葉山での比較調査では、ここのアオモリトドマツが約500年前頃に定着したことを推定した。稚樹の定着調査では、コメツガとアオモリトドマツの両種とも積雪が多くなると地表上の定着が減り、根張り、倒木、マウンド上に集中する点で共通していたが、コメツガの方がより雪の少ない状態でその傾向が強く、この性質の差が多雪環境下においてコメツガが劣勢となっている可能性が示された。2001年に新潟県で行った積雪多点観測との比較では補正前はr2=0.28だったものが補正後はr2=0.48に増大して推定精度が向上し、小雪域での過大評価と多雪域での過小評価が改善された。積雪推定モデルの融雪係数決定法の考察を行った結果、西日本では融雪係数が若干大きく、地域別の係数同定作業が必要であることが示唆された。RCM20の結果によると、温暖化により中部から東北日本にかけて降雪量が著しく減少するが、これには冬季の季節風の弱まりにも起因するところが大きい。この影響は山岳地の山頂部の強風環境に依存してパッチ状に成立している植生群落の分布にも大きな影響を与えると予想された。アムール川河口域の花粉分析では、現在この地域が分布北限となっているナラが温暖期に増加したことが示されており、分析を継続している。西シベリアのタイガ・ステップ境界付近での花粉分析では、カバノキ属やヨモギ属等の花粉が各層位から検出されたが、ダイヤグラムを描くには検出数が少なかった。またCN分析と粒度分析の結果から、炭素含有率は表層30cmまでは5%以上の値を示したもののすぐに減少し、2m以深は最下層の10mまで1%未満で推移し、上層に比べ粘土の含有率が高かった。これらのことから、最終氷期以降もこの地域では植生の少ない状態が長く続いたものと推定した。
カテゴリ よもぎ

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