課題名 |
日本産広葉樹材の識別データベースの開発 |
課題番号 |
2003004424 |
研究機関名 |
森林総合研究所
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研究分担 |
森林総合研究所
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研究期間 |
継続2001~2005 |
年度 |
2003 |
摘要 |
日本産広葉樹材の識別データベースの開発当年度の試験研究方法:1)当年度は高知県魚梁瀬地域および群馬県吾妻地域、鹿児島県内之浦地域において木材標本採集を行った。全プレパラート標本について木材組織を観察し、識別拠点の解明とコード化を行い、公開データベース化の作業を進めた。2)アジア産ツツジ属について、試料を取りまとめて木材組織プレパラートを作製した。年輪内及び年輪境界部での道管と周辺細胞との連絡経路を、蛍光顕微鏡、走査電子顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡を用いて3次元的に解析した。13Cを用いたカーボンアロケーション季節変動解析のための基礎条件を把握する。3)青森県および東京都の遺跡出土木材の同定結果を取りまとめ、過去の木材資源利用と森林植生を解明した。当年度の研究成果:1)高知県魚梁瀬地域および群馬県吾妻地域、鹿児島県内之浦地域において木材標本採集を行い、約400点の木材標本を採集した。魚梁瀬地域では、ウンゼンツツジ、ズイナ、オンツツジ、キシツツジ、ヤマフジ、ウドカズラなど西日本にしかない樹種を、また吾妻地域では、コハクウンボク、コガシワ、カジカエデ、ヤハズハンノキなど比較的珍しい樹種を採集した。ツツジ科からブナ科までの約1000標本分の画像データベースを作製した。全プレパラート標本について、道管配列と放射組織型の識別コード化を行った。ウェッブ上で検索可能なページを開発した。さらに当所の木材標本庫に保管されている全木材標本の文字情報データベースを構築して公開した。2)日本産および中国雲南産のツツジ属について既存標本の取りまとめを行い、プレパラート作製を行った。環孔材樹木では、同一年輪内における孔圏内と孔圏外の道管の連携は多くないが、年輪界をまたいだ前年晩材道管と当年早材道管の間には多くの道管相互間壁孔が存在し、連携が多いことが明らかになった。13Cを用いたカーボンアロケーションの季節変動を解析するために、実験条件の把握を行った。3)縄文時代前期の青森県青森市岩渡小谷(6)遺跡の水場遺構に使用されていた樹種を取りまとめた結果、その直後に営まれた三内丸山遺跡と同様の選択傾向にあり、縄文時代前期~中期の青森平野周辺における森林資源の実態を反映していると考えられた。同じく縄文時代前期の福井県鳥浜貝塚では、照葉樹林の要素が多くて木製品の器種ごとの樹種選択が明瞭であり、樹種の利用体系がまったく異なることが明らかになった。岩渡小谷(6)遺跡をはじめとする本州各地の遺跡から検出されたウルシ属の木材組織を計測し解析した結果、年輪内における道管直径の分布によって、ウルシはそれ以外の樹種から明瞭に識別できることを明らかにした。ウルシ木材の同定の結果、縄文時代前期以降、本州の中北部では、各地でウルシが栽培されていたことが明らかになった。江戸時代の初期の木材資料である東京都八丁堀三丁目遺跡の棺材の樹種を識別し、サワラが優先すること、時代が下るに従って棺材が薄くなること、円形木棺が主流となることを明らかにした。棺材の変化は、17世紀を通して顕在化する森林資源の枯渇および江戸の人口増加の結果であると考察した。
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カテゴリ |
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データベース
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