摘要 |
1.ブタにおける匂いとスイッチ押しを組み合わせた匂い連合学習の研究では、匂いの種類により、正解率や学習時における海馬の神経活動の変化に違いが観察され、適切な匂いを組み合わせた連合学習がブタの行動制御に有効なツールとなる可能性が示唆された。2.ウシにおけるストレス軽減の研究では、隔離ストレスは血漿中コルチゾル濃度と葛藤行動を有意に増加させること、このうち血漿中コルチゾル濃度の上昇はオキシトシンの中枢作用により抑制されることを明らかにし、ウシおいても脳内のオキシトシンがストレス内分泌反応のブレーキとして機能していることを示した。3.ウシにおける成長ホルモン分泌調節機構の研究では、明暗条件を厳密に制御した環境下では、夜間に明瞭な成長ホルモン分泌の亢進が起こること、また、この亢進は夜間の1時間の光暴露により強く抑制されることを明らかにし、メラトニン分泌や覚醒・睡眠リズムなどの光環境により変動する内因性要因が成長ホルモン分泌の調節に深く関わっていることを示した。この結果は、光環境の制御によるウシの成長促進技術の開発に結びつく重要な基礎的知見である。4.ヤギにおける繁殖調節中枢機構の研究では、新規ペプチド、メタスチンを産生する神経細胞は、ヤギ脳内では視床下部前部の内側視索前野及び後部の弓状核の二つの神経核にほぼ限局して存在すること、メタスチン神経細胞は卵巣ホルモンであるエストロジェンにより直接制御されていることを明らかにした。さらに、弓状核メタスチン神経細胞群では、末梢血中の黄体形成ホルモンのパルス状分泌と一対一に対応する神経活動の上昇が起きていることを発見した。これらのことから、メタスチン神経系は卵巣からのフィードバック作用を仲介して黄体形成ホルモン分泌を統御する重要な繁殖調節中枢である可能性が提唱された。5.ウシにおいても、ヤギ同様のメタスチン神経系が存在することを、形態学的及び内分泌学的に明らかにした。
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