摘要 |
目的:寒締め野菜の栽培が広く普及するに従い、特徴となる糖度、硝酸態窒素などの体内成分含量について産地独自の基準を設けて出荷している事例が多い。しかし体内成分含量は気象条件で変化しやすいことから、気象と体内成分含量の関係を定量化する必要がある。そこで、冬期、多日照の太平洋側の本県と低日照の日本海側の秋田県でホウレンソウを栽培し、気象の推移と寒締めによる体内成分含量の変化を解析する。また、東北農研センターにおいて温度勾配チャンバーを用いて寒締め効果の温度応答を測定するほか、冷涼気候ラボを利用して低温順化のプロセスと、根の吸水作用と地温との関係を解析する。これらの結果に基づいて、低温順化が始まる温度以下を毎時積算する寒締めデグリアワーを策定する。予定成果(初年目):温度と日射量の関係が体内成分の蓄積に及ぼす影響を把握する。成果:ア 外気の低温を利用して各種葉菜のビタミンや機能性成分含有量を増加させることが可能である。また、ホウレンソウやコマツナの成分含有量に対する低温の影響の大きさはビタミンC>β-カロテン=ルテイン>ビタミンEであった(1994 東北農業研究 47,317-318)。イ 寒締め処理による成分品質の向上は、特に水溶性成分である糖、ビタミンC、及び硝酸について低温伸長性の高い品種で大きく、低温伸長性の低い品種は脂溶性ビタミン類の増加が大きかった。栽培時の温度条件や目的とする品質成分に応じ、品種の選択が必要である(1997 東北農業研究 50,191-192)。ウ 冬期ハウス内で生産するホウレンソウの成分品質は外気低温を利用することによって、シュウ酸を増加させることなく、大きく向上できた。外気低温処理による伸長停止を利用すれば収穫日の調製が可能である(日本土壌肥料学会誌 1995 第66巻 第5号 564-565)。エ 低温順化したキャベツ幼植物において、短時間の温度上昇により耐凍性が低下すること、より高い温度の方が脱順化が進みやすいことが報告されている(1997 園芸学会雑誌 第66号別冊1 356-357)。
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