摘要 |
目的:岩手県は全国一位のホップ主産県である。栽培面積は減少傾向にあるものの127ha(平成13年,岩手県ホップ連合会),6億円の粗生産額を誇る(H12岩手県生産農業所得統計)。このホップ生産において毬花の収量・品質に大きな影響を及ぼす病害虫のうち,灰色かび病は現在開花毛花期から毬花初期にスルフェン酸系水和剤(商品名:ユーパレン水和剤)を散布することで被害を回避している。ところが,この薬剤の原体メーカーである日本バイエルアグロケム(株)では製造をすでに中止し,平成16年9月を以て全作物に対する登録を失効することを公表した(H14.1)。本剤はホップ灰色かび病に適用される唯一の登録農薬であり,本剤の登録失効後は防除薬剤を欠くことになるため,収量・品質の低下を免れない。このため,平成17年度以降本病を対象とした防除が困難となり,生産振興の障害になる。そこで,スルフェン酸系水和剤の代替薬剤(フェンヘキサミド水和剤=商品名パスワード顆粒水和剤)のホップ灰色かび病に対する防除効果を検討し,併せて作物残留試験を行うことにより,ホップにおける本剤の登録を促進しようとするものである。なお,ホップにおける防除試験,作残試験を実施できる県は主産県である本県と山形県をおいて他にないため,時間的制約を考慮すると平成14年度から効果試験1例(予備試験)を本県で自主的に実施し,15年度に残る効果試験2例(岩手,山形),作残試験2例(同)を実施する必要がある。これらの試験結果を経て平成16年当初に適用拡大申請を行えば,平成17年度のホップ生産に間に合うことができる。到達目標: (1)ホップ灰色かび病を対象としたフェンヘキサミド水和剤の防除効果を明らかにする。 (2)フェンヘキサミド水和剤のホップにおける作物残留分析を実施する。※最終的には試験成績を原体メーカーに供与し,農薬登録を図るよう,要請する。予定成果(初年目):(1)フェンヘキサミド水和剤のホップ灰色かび病防除効果を明らかにする。 (2)フェンヘキサミド水和剤のホップにおける作物残留特性を明らかにする。(最終年)成果:(1)ホップ灰色かび病(Botrytis cinerea)は本県ではじめて確認された(佐藤,1968)。 (2)灰色かび病防除薬剤はユーパレン水和剤が病害虫防除基準に掲載されている(H14防除基準)。本剤はS48年版ですでに掲載されている。(3)適用農薬はユーパレン水和剤のみである(「農薬適用一覧表」日植防,2001)。(4)地域特産事業ではホップフキノメイガを対象にビフェントリン水和剤(商品名:テルスター水和剤)の登録促進を図った経緯がある(H9研究成果=環境保全研)。
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