ロングマット水耕苗移植栽培技術の確立と実証

課題名 ロングマット水耕苗移植栽培技術の確立と実証
研究機関名 岩手県農業研究センター
研究分担 生産工学
研究期間 新H15~17
年度 2003
摘要 目的:本県の水田面積は8万9千ha(H12)で、基盤整備済み面積は約54千ha(整備率56%)、1ha以上の大区画面積は約5.4千ha(大区画整備率5.7%)であり、県中南部を中心として大区画ほ場が年々増加している。一方、稲作農家数は暫減・高齢化の傾向にあり、作業の省力化、軽労化が求められている。本県では、寒冷地大区画ほ場における水稲の省力化技術として、国で開発したロングマット水耕苗の育苗・移植技術を基本とした省力化技術に関する研究をこれまで実施してきた。今後は更に使い易い技術とするために新たな技術の開発・改良を行い、併せて生産現場での導入実証を行い現場での課題解決を図る。到達目標:ア ロングマット水耕苗の低コスト効率的育苗技術の開発。安価な育苗ベッドの開発、活着促進のための養液管理技術の開発、苗貯留技術の開発  イ 移植性能・収量水準の向上 移植精度:欠株率5%以下、損傷苗率10%以下、収量:慣行並み  ウ ロングマット水耕苗育苗の定着条件の提示導入実証により大区画ほ場整備地区における大区画ほ場向けの技術として定着する条件を提示する。予定成果(初年目):・大区画ほ場整備地区における実証により問題点を抽出する。 ・安価育苗ベットの開発と問題点の抽出期待効果:大区画ほ場における苗補給・苗運搬作業が省力化・軽労化され、地域における作業受委託等による規模拡大が促進される。成果:(1)ロングマット水耕育苗マニュアル(平成12年度 岩手農研セ、長野総農試) (2)ロングマット水耕苗移植技術(平成14年度 岩手農研セ成果)成果要約:(1)寒冷地におけるロングマット水耕苗技術の導入条件の設定・育苗資材費は2,832円/10aで、稚苗自家育苗方式の5,678円/10aに比較して50%の費用で生産できることが明らかとなった。・ロングマット水耕苗の生産コストは1ロ-ルあたり6,500円~7,000円である必要があることが明らかとなった。 ・ベッドの有効活用については、水稲用スチ-ルベットを用いたホウレンソウ水耕栽培において、発泡スチロ-ルを加工した植え穴用パネル作り養液循環させることでほぼ野菜用のベットと同等の収量・品質が得られた。・ロングマット水耕育苗技術導入経営体の明確化については、ロングマット水耕苗は、稚苗自家育苗方式と比較して育苗時間が26%減少でき、春に作業競合が起こるような経営では導入効果が高いことが明らかとなった。また、育苗ベッド年1回利用では費用は慣行と比較して増加することが明らかになった。 (2)寒冷地におけるロングマット水耕育苗技術の開発 ・水耕育苗における品種の適応性については、岩手県の主要品種4品種についての適応性が認められた。 ・種子消毒剤の実用性については、スタ-ナ水和剤単剤の消毒(湿粉衣、浸漬)で根の褐色化と強い草丈伸張抑制が見られた。ベンレ-ト水和剤、ヘルシ-ド水和剤の湿粉衣法で若干の生育抑制、発根抑制が見られたが、マット形成には影響がなかった。ベンレ-トTを含む他剤での薬害は特に認められず実用性が認められた。H14年からベンレ-トTの使用中止に伴いテクリ-ドCフロアブルの低濃度長時間浸漬で消毒を行ったが、薬害は認めらず、実用性が認められた。 ・慣行資材に代わる安価な養液資材の検討については、硝酸態窒素中心の水耕栽培用肥料「大塚1号+大塚2号」のみでは葉色が淡く根が伸長しないが、アンモニア態窒素中心の「健太郎」を加えることで慣行稚苗並みの苗が得られたことから基本養液として決定した。EC2~4dS/m程度の高濃度養液一発施肥の実用性も高いことが明らかになった。また、慣行養液に代わる安価な資材については、養分吸収によるpH変化の小さい養液栽培用資材を用いる必要があることが明らかになり、基本養液以外では,市販の養液栽培用液肥(ハイスピリットAx,By)により慣行と同等の移植苗が育苗できた.しかし、この養液ではガルバニウム鋼材ベッドを使用した場合、育苗後半に葉が黄化して根が伸びないなど生育に悪影響が見られた。・省力的な養液管理方法については、循環用タンクに併設して補給用タンクを設けることで、2~4日おきの省力的な養液管理が可能であった。また、養液タンクを2段に組み合わせた方式(下段タンクからECの低い養液をベットに供給し,下段タンクの養液の減少に応じて,上段タンクよりECの高い養液が下段タンクへと供給される方式)では,ベットに供給される養液のpH・ECが比較的安定し,慣行と同等の苗質の苗を育苗できることが明らかになった。・水耕育苗における温度条件については、寒冷地での4月、5月育苗では、電熱ヒ-タを用いた 養液加温育苗を行うことで、14~20日育苗で草丈10cm~13cm、葉齢3葉程度の苗の作出が可能である。 ・長さ0.6mのショ-トベットで水耕液の適温を検討した結果、2週間育苗を目標にした場合の苗質確保には、昼28℃、夜25℃の温度条件が適していることが明らかになった。   ・草丈と最低水温の積算値との関係から、最低積算水温230℃で草丈8cm、最低積算水温260℃で草丈10cm、最低積算水温300℃で草丈12cmの苗が得られることが明らかになった。また、葉齢と最低水温の積算値との関係から、概ね最低積算水温200℃以上で2葉となり、最低積算水温250~300℃で3葉程度となり、それ以上の温度確保があっても葉齢の増加は認められないことが明らかになった。 ・簡易な巻き取り手法の開発については、中央農研センタ-(総研2チ-ム)開発の巻き取り補助装置を用いた巻き取りは延べ時間で慣行巻き取りのおおよそ1/3~1/4で巻き取り可能であった(2人作業が1人で作業可能になった)。・巻き取り苗の貯留条件と本田初期生育については、常温(室内:日中最高25℃、夜間最低10℃)でも1日1~2回の十分な灌水条件で貯留することにより、8℃高湿条件貯留と同程度の活着、初期生育が得られることが明らかになった。 ・ロングマット水耕苗田植機の作業精度向上技術については、Y社製ロングマット苗専用田植機の植え付け性能は高いが、苗押さえ装置が特殊で取り扱いに問題があった。苗押さえ装置の効果と必要性は高く評価できた。総研2チ-ム開発の苗押さえ装置は苗損傷、機械的欠株の発生抑制に大きな効果が認めらることが明らかになった。 ・ロングマット苗における箱施用剤を使用した病害虫防除の可能性については、現地に普及している殺虫殺菌剤2種(ウィンアドマイヤ-箱粒剤、Dr.オリゼプリンス粒剤)の、ロングマット苗に移植時施用した場合の薬害は認められず実用性が認められた。しかし、登録外使用になることから、今後中央農研センタ-を含めて検討することとしている。 ・水稲除草剤の使用による生育への影響については、ロングマット水耕苗において10~13cmの苗は植え付け深を4~5cmにしても根の露出、損傷苗の発生、浮き苗が多く発生する条件ではプレチラクロ-ル、カフェンストロ-ル含有剤の施用は薬害を多く発生することが明らかになった。・本田における施肥法については、慣行の土付き苗と同様の施肥法で十分であると判断された.また,緩効性肥料(LP100)を用いることにより,慣行と同等の収量を維持しながら,本田での追肥を省略できることが確認された. (3)大区画ほ場におけるロングマット苗移植技術の総合実証・現地における実証では、育苗期間15日程度で、移植時の苗質が2.5~3葉、草丈8~10cmで移植することで、植え傷みが抑えられることが明らかになった。また、1ha区画ほ場実証で、収量慣行比96%が得られた。 ・育苗マニュアルの作成については、平成12年までに得られた成果から育苗マニュアルを作成し、県内成果及び成果情報として提供した。 研究成果:「ロングマット水耕苗育苗マニュアルの作成」 平成12年度岩手県農業研究センタ- 行政成果「ロングマット水耕苗移植技術」 平成14年度岩手県農業研究センタ- 指導成果 残された問題:(1)寒冷地におけるロングマット水耕苗技術の導入条件の設定 ・経済評価については、育苗ベット敷設のためのコスト増の問題があることから、育苗ベッドの材質、工作法等について検討することとする。 (2)寒冷地におけるロングマット水耕育苗技術の開発・寒冷地において安定的にベッド2回転利用しての水稲水耕苗栽培については、安定して移植適期内で作業できるようにする必要があることから、7日程度以上の貯留技術について検討することとする。 ・植え傷みの少ないロングマット水耕苗の作出は手探りで可能であったが、水耕苗の生理生態と理想苗作出に関与する条件(温度、日照、養液管理法等)が不確定であることから、この点について検討する。 (3)大区画ほ場におけるロングマット苗移植技術の総合実証 ・現地での育苗から植え付けまでの実証と経営評価について取り組むこととしている。 ・技術マニュアルについては、理想苗の作出条件を解明した場合、随時成果として現場に提供する予定である。学会発表:「水稲ロングマット水耕苗の育苗移植技術の確立」平成11年度東北農業研究発表 「寒冷地における水稲ロングマット水耕苗の育苗方法」平成12年度農業機械学会東北支部会発表
研究対象 水稲
戦略 農業機械開発改良
専門 農業機械
部門 水稲
カテゴリ 肥料 病害虫 育苗 加工 管理技術 機械開発 規模拡大 くり 経営管理 軽労化 コスト 栽培技術 種子消毒 省力化 除草剤 水田 水稲 水耕栽培 施肥 低コスト 病害虫防除 品種 ほうれんそう 養液栽培

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