摘要 |
目的:北東北地域においては、麦・大豆の単収水準の低さに加え、1年2作、2年3作など土地の高度利用の困難さが指摘されている。東北農業研究センターでは、麦・大豆の作期の競合問題を解消し2年3作を可能とする立毛間播種機とそれによる栽培技術を開発してきており、この技術を地域に適合した形で普及・定着させるにより、実需者から要望されている高品質麦・大豆の1年2作、2年3作生産が可能となる。この技術を確立するため、ここでは麦・大豆立毛間播種栽培実証農家での実態を調査し問題点と解決策を探ると同時に、実証により研究成果の普及展示を図る。到達目標:(ア)東北寒冷地における大豆→小麦3年5作体系を実証し、技術的・経営的に導入効果が明らかになる。(イ)立毛間播種栽培試験の実証とその展示効果により当該技術が地域内に普及する。(ウ)麦・大豆立毛間播種栽培の栽培マニュアルが作成になる。成果:東北農業試験場経営管理研究室では「小麦・大豆立毛間播種技術体系の小麦栽培経営への適用と経営的効果」について現地実証農家での実績をもとに平成10年度東北農業研究成果情報として次のような結果をとりまとめている。小麦・大豆を3年5作で1.8ha作付した場合、農業所得を試算すると麦単作に比べて(i)小麦収量の増大、(ii)大豆収益の付加などにより約50万円増加する。また、現状経営規模で所得が最大となるのは小麦・大豆が3.4haまで拡大した場合で、小麦単作に比較して約150万円の増額が見込まれる。成果要約:実証圃の大豆は主茎長64.5cm、全重55.7kg/aで全体的にやや倒伏していたが、立毛間播種に適している条件で、収量は対照区と同等。立毛間播種機による大豆立毛間小麦播種は、立毛大豆に対する損傷も少なく、比較的スムーズに行え、平均作業速度0.6m/s、10a当たり作業時間22.0分/10a。小麦播種23日後に大豆収穫を行った。供試小型普通型コンバインのクローラが麦を踏圧することもなく、作業は順調に行うことが可能で、平均作業速度0.77m/sで、10a当り作業時間23.8分/10aであった。(平成14年度)残された問題:立毛間播種機による播種作業では、種子及び肥料ホッパが小さいため補給回数が多くなり、種子及び肥料補給に要する時間割合は17.4%と高く、改善が必要であった。2年目の雑草発生対策等が未検討。次年度に検討する。
|