タイトル | 大豆「ユキホマレ」を活用した田植え後播種栽培技術 |
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担当機関 | (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 北海道農業研究センター |
研究期間 | 2001~2003 |
研究担当者 |
渡辺治郎 大下泰生 鮫島良次 喜多孝一 辻 博之 伊藤淳二 濱嵜孝弘 |
発行年度 | 2003 |
要約 | 大豆「ユキホマレ」は熟期が早く、6月第1半旬までの田植え後播種で収量の低下がな く、熟期は中生品種並みとなる。田植え後播種により、ダイズわい化病の感染率の低減、カビ粒 発生の抑制、水稲移植作業との作業競合の回避が可能となる。初霜日を成熟晩限に設定すると、 ユキホマレの温度反応から播種晩限を推定でき、成熟晩限リスクを考慮する場合の参考となる。 |
キーワード | 大豆、ユキホマレ、ダイズわい化病、田植え後播種、遅播き、播種期、 |
背景・ねらい | コメの生産調整が強化され、大豆・麦の水田における本作化と水田輪作体系の確立が求められている。水田作では水稲移植期に大きな労働ピークが存在し、大豆の播種作業と競合する。その ため、田植え前の5月上旬に大豆の播種を行う傾向が強く、砕土性の低下や拙速な作業を招き、 出芽率の低下などの問題が生じている。一方、ダイズわい化病は長期間主要な大豆病害となって いるが、近年、ダイズわい化病ウイルス保毒有翅虫の飛来が一時期に限られ、播種期を遅らせる ことにより感染を低減できる可能性が示された。そこで、熟期の早い大豆「ユキホマレ」を田植 え後に播種することによって、作業競合軽減と、ダイズわい化病感染の抑制を図る。 |
成果の内容・特徴 | 1)「ユキホマレ」の6月上旬播種(遅播き)は、5月第6半旬(中播き)と収量は同等で、成熟期は中生品種「トヨムスメ」の中播きとほぼ同じ9月下旬~10月上旬となる(表1)。 2)成熟期に気温が高く降水量が多いとカビ粒が発生しやすいが、遅播きでは成熟期が気温の低い時期になるため、降水量が多くてもカビ粒発生の危険性は少ない(表2)。 3)遅播きでは、出芽~初期生育の温度が相対的に高いことから標準的な栽植密度でも茎葉の繁 茂が速く個体競合が強い。このため、節間伸張がやや大きく(データ略)、最下着莢位置が高く、倒伏しやすい草型となる(表1)。 4)播種時期が遅くなると、ダイズわい化病株率は明らかに低下する(図1)。ダイズわい化病感染は5月下旬から6月上旬で多く、それ以後は低下する(データ略)。 5)道央地帯における5年に1回の早い初霜日の日最低気温は、各地域ほぼ共通で約7°Cである。 「ユキホマレ」の播種~開花始期の日数は温度に依存し、有効積算温度619°C(基準温度4.4 °C)を要するが、開花始期~成熟期は温度依存性が認められず平均72日である。ユキホマレの熟期晩限を初霜日に設定すると、日最低気温が7°Cになる前日からの逆算により、播種晩限 推定値が算出でき、成熟遅延リスクを考慮した播種晩限推定メッシュ図が作成できる(図2)。 |
成果の活用面・留意点 | 1)田植え後播種は6月第1半旬までとする。空知の中部以南および石狩のうち、温度条件の良い水田地帯で可能と考えられる。 2)田植え後播種ではダイズわい化病は減少するがゼロにはできないため、エチルチオメトン粒剤を播種溝施用し2次感染を防止する。また、多発年には感染率が10%以上に増加する場合もあるので、有翅虫の発生動向に注意する。 3)田植え後播種では、倒伏しやすい草型になるので、標準栽植密度(16700本/10a程度)で栽培する。また、播種期が遅いので圃場の乾燥防止に留意する。 |
カテゴリ | 乾燥 栽培技術 水田 大豆 播種 品種 輪作体系 わい化 |