タイトル | 高温誘導性遺伝子を利用した複合環境ストレス耐性イネ |
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担当機関 | (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 北海道農業研究センター |
研究期間 | 2001~2003 |
研究担当者 |
佐藤 裕 |
発行年度 | 2003 |
要約 | 高温誘導性遺伝子 APXa と sHSP17.7過剰発現は、ともに複数のストレスに対し て、イネの耐性を高める効果があり、特に、sHSP17.7過剰発現は、高・低温耐性、乾燥 耐性、UV 耐性及び塩ストレス耐性の全てを高める効果がある。 |
キーワード | 複合環境ストレス耐性、高温誘導性遺伝子、APXa、sHSP、イネ |
背景・ねらい | イネは低温馴化能を持たないが、他のストレスに曝されることにより低温耐性を獲得す ることが知られている。例えば、一定時間高温に曝されたイネ幼苗は、低温耐性が著しく 高まる。この現象には高温で発現が誘導される活性酸素消去酵素遺伝子 APXa と分子シャ ペロン活性を持つ熱ショックタンパク質遺伝子 sHSP17.7関与が示唆されている。そこ で本研究では、これらの遺伝子をイネで過剰発現させることにより、イネ幼苗に低温耐性 をはじめとする種々のストレス耐性を付与することを試みた。 |
成果の内容・特徴 | 1.PMLH7133 GUS を APXa で置き換えたコンストラクトをアグロバクテリウム法で再導入して作出した形質転換イネでは、APXa が過剰発現している系統と、原品種と同程度に発現量の少ない系統とがある(図 1A)。 2.APXa を過剰発現する形質転換系統では、APX 活性が原品種より2倍程度高く、低温処理後の過酸化水素発生量が少ない(図 1B)。また、播種後 10 日目の幼苗の低温、高温及び乾燥耐性が原品種よりも有意に高い(図 2)。 3.PMLH7133 GUS を sHSP17.7 で置き換えたコンストラクトをアグロバクテリウム法で再導入して作出した形質転換イネでは、系統によって導入遺伝子が種々のレベルで発現している(図 3)。 4.sHSP17.7 を過剰発現する形質転換系統では、高・低温耐性、乾燥耐性、UV 耐性及び塩ストレス耐性が原品種よりも有意に高い(図 4)。 5.以上のように、APXa と sHSP17.7過剰発現は、ともに複数のストレスに対して耐性を高める効果があり、特に、sHSP17.7過剰発現は、調査したストレスの全てにおい て耐性を高める効果がある。 |
成果の活用面・留意点 | 1.植物のストレス交差耐性発現機構の解明に利用できる。 2.穂ばらみ期耐冷性については、未調査である。 |
カテゴリ | 乾燥 耐寒性 播種 品種 |