タイトル | RNA シャペロンを介する生物間に保存された低温適応機構 |
---|---|
担当機関 | (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 北海道農業研究センター |
研究期間 | 2001~2003 |
研究担当者 |
Dale Karlson 今井亮三 中南健太郎 |
発行年度 | 2003 |
要約 | コムギなど高等椊物は原核生物と構造と機能を共通にする低温ショックドメイン タンパク質を有する.低温下で蓄積するそのタンパク質の機能は,RNAの2次構造を解消さ せるRNAシャペロンである. |
キーワード | コムギ,大腸菌,低温馴化,低温ショック,RNAシャペロン |
背景・ねらい | 熱ショック応答は生物普遍的に存在し,分子シャペロンによるタンパク質構造再生の機構 は生物の持つ基本機能であることが明らかにされている.一方,低温ショック応答として は普遍性の高い適応機構はこれまで知られていない.原核生物では,低温下で低温ショッ クタンパク質(Csp)が誘導され,RNA 上に形成される2次構造を解消し,翻訳停止解除 あるいは抗転写終結を行う RNA シャペロンとして機能することが示されているが,高等 生物ではこのような機構は知られていない.本研究では,原核生物と高等椊物間で保存さ れる低温適応機構を解明することを目的としている. |
成果の内容・特徴 | 1.コムギ WCSP1 タンパク質は大腸菌 CspA と保存性の高い低温ショックドメイン,グリシンに富んだ領域及び3個のジンクフィンガーモチーフよりなる(図1A). 2.WCSP1はpolyG, polyUに特異性の高いRNA結合活性と1本鎖及び2本鎖DNAに対する結合活性をもつ(図1B,C). 3.WCSP1 遺伝子の発現は低温馴化中のクラウン組織で誘導される.またその時 WCSP1タンパク質も高度に蓄積する(図1D). 4.WCSP1導入により,大腸菌 csp 四重変異株が示す低温感受性が回復する.従ってWCSP1 タンパク質は大腸菌 Csp と共通の機能を有する(図2). 5.WCSP1 は trpL ターミネーターによって起こる転写終結を解除する.RNA2次構造を解消させる RNA シャペロン活性をもつ(図3). 6.WCSP1 相同遺伝子は,高等椊物に広く存在している. |
成果の活用面・留意点 | 1.生物の低温適応の解明を目指した研究に基礎情報として活用できる. 2.作物や微生物の低温耐性の強化に単離された遺伝子を利用できる. |
カテゴリ | 耐寒性 |