タイトル | コムギの低温特異的に発現誘導される抗菌タンパク質遺伝子 |
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担当機関 | (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 北海道農業研究センター |
研究期間 | 2001~2003 |
研究担当者 |
今井亮三 小池倫也.津田栄(産総研) |
発行年度 | 2003 |
要約 | 秋播きコムギより,椊物ディフェンシン遺伝子(Tad1)を単離した.Tad1の発現は 低温により誘導されるが,ジャスモン酸やサリチル酸では誘導されない.低温馴化過程で 起こる耐病性の獲得に関係する. |
キーワード | コムギ,ディフェンシン,γ- チオニン,低温馴化 |
背景・ねらい | ムギ類など越冬性作物においては秋の低温遭遇により,耐凍性や耐病性等の越冬に必要な 能力が飛躍的に増加する現象(低温馴化)が知られている.この椊物が本質的にもつ耐性 獲得機構の分子レベルでの理解は限られている.低温馴化の過程で誘導される生理学的, 生化学的,形態学的変化とそれを支配する遺伝子機能を関連させ,低温馴化現象の全体像 を明らかにする研究が求められている.本研究ではコムギの低温馴化過程において発現す る耐病性獲得の分子機構を明らかにする. |
成果の内容・特徴 | 1.コムギ Tad1 遺伝子は,椊物ディフェンシン/γ- チオニンをコードする(図1). 2.Tad1 タンパク質は N 末端にシグナルペプチドを持ち,成熟タンパク質の配列は椊物ディフェンシンに特徴的な8個の保存された Cys 残基を持つ(図1). 3.Tad1 遺伝子はクラウン組織において,低温馴化初期に発現誘導される.また幼苗にお いても,短時間の低温処理によって誘導され,その誘導に ABA は本質的な関与をしない(図2). 4.Tad1発現は,ジャスモン酸やサリチル酸処理によって誘導されない.主要な感染シグナルには依存せず,低温シグナルにより活性化される新しいタイプのディフェンシンである(図3). 5.組み換え Tad1 タンパク質は椊物病原性細菌 Pseudomonas cichorii生育を阻害する(図4).また,紅色雪腐病菌(Microdochium nivale)に対して形態異常を誘導する. |
成果の活用面・留意点 | 1.冬作物が持つ低温遭遇による耐病性獲得機構の解明に利用できる. 2.単離された遺伝子は新規ディフェンシン遺伝子として様々な作物の耐病性強化に利用 できる. |
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