牛における腸管出血性大腸菌O157の動態と低減技術

• 担当機関: 北海道畜試
• 研究期間: 1999～2003
• 研究担当者: 及川学; 平井綱雄
• 発行年度: 2003
• 要約: 腸管出血性大腸菌(EHEC)O157はその保菌牛群内で再感染を繰り返して維持され
• キーワード: [キーワード]ウシ、腸管出血性大腸菌、O157、ベロ毒素、牛糞便、低減技術
• 背景・ねらい: EHEC O157保菌牛群に対する排泄低減対策については、生菌製剤の投与、乾草単独給与、 サイレージの給与などについてその有効性が報告されているが、まだ確立された方法は ない。そこで本課題では、保菌牛群におけるEHEC O157の感染実態を調査するとともに、 これまで報告のあった排泄低減方法やその他の方法における低減効果を検討した。
• 成果の内容・特徴: 1.乳用牛群の調査(十勝管内5戸)では、EHEC O157は検出されなかったが、約30%の牛; からベロ毒素(VT)遺伝子が検出され、他のVT産生大腸菌(すなわちEHEC)の存在が考 えられる。群飼育されている育成牛の牛床から高率にVT遺伝子が検出されることから、 群飼育牛群ではEHECが維持されやすい。; 2.EHEC O157高率保菌牛群における個体別の排菌状況を継続的に調査したところ、排菌 数は数週間の単位で大きく変動し、排菌牛の交替が認められた(表 1)。高率保菌牛群 は牛群内でEHEC O157の再感染を繰り返している。; 3.牛から分離されたEHEC O157の多くは種々のサルファ剤や抗生物質に感受性を示す。 感受性株のEHEC O157保菌牛群に対しては、サルファ剤の複数回投与でEHEC O157を排除 あるいは低減することができる(表 2)。しかし、耐性菌保菌牛群の場合は効果が認め られないことから、保菌株の薬剤感受性検査をする必要がある。; 4.in vitroでEHEC O157に対し発育抑制効果のある枯草菌や乳酸菌主体の生菌製剤2種の 投与ではEHEC O157の低減効果は認められなかった。; 5.乾草単独の短期給与では、EHEC O157や他のVT産生大腸菌の排菌数や保菌率が増加す る場合もあり、安定したO157低減は難しい。; 6.濃厚飼料主体の飼料給与牛へのサイレージ給与では、O157の低減効果は認められなか った。しかし、ガラクトオリゴ糖給与では給与期間中の排泄低減が認められ、その低減 効果が期待できる(表 3)。; 7.牛床への定期的な消石灰の散布消毒(週1回0.5kg/m²)ではEHEC O157の低減効果が認 められ、低減対策には環境の清浄化を中心とした対策が有効である(表 4)。
• 成果の活用面・留意点: 1.サルファ剤や抗生物質の投与は、薬剤感受性試験を行い感受性の薬剤を選択するとと; もに投与効果を確認する必要がある。なお、薬剤により種々の制限があるので、その選 択、投与については、獣医師の指示を受ける必要がある。
• カテゴリ: 耐性菌 薬剤