イチゴのシクラメンホコリダニに対する温湯灌注防除法

タイトル イチゴのシクラメンホコリダニに対する温湯灌注防除法
担当機関 上川農試
研究期間 2003~2003
研究担当者 後藤昌人
水越 亨
発行年度 2003
要約 高設栽培四季成り性いちごの生育期に発生するシクラメンホコリダニ被害株に55°C(± 2°C)の温湯を直接灌注する防除法により、花房が回復するなど被害が軽減する。温湯によるイ チゴへの悪影響はない。
キーワード シクラメンホコリダニ、イチゴ、四季成り、温湯、高設栽培、防除
背景・ねらい イチゴに多発するシクラメンホコリダニには登録薬剤が少なく、現地では対
応に苦慮している。そこで温湯を被害株のクラウンを中心に直接灌注するという農薬に頼 らない方法で被害の軽減を図る。
成果の内容・特徴 1. 温湯温度44、47、50、53°Cの90秒灌注で行った予備試験では、53°C区で処理後の展開葉の被
害軽減や花梗の回復、立ち上がりが認められた。また、各処理区とも温湯灌注処理による障 害は認められなかったことから、温湯灌注処理は本虫の被害軽減に有効であり、防除効果が みられる温湯温度の下限は53°Cである(図1)。
2. 異なる温度の温湯に被害花梗を10秒間浸漬した場合、ホコリダニ寄生程度の低下は53°C区か ら認められ、高温になるに従って顕著となる。しかし、63°C区においても死滅することはな い(図2)。
3.四季成り性いちご4品種で行った温湯灌注処理において、57°C区では軽度な障害がみられる場 合があった。60°C区以上では灌注部位に明瞭な障害が発生し、草丈も抑制された(図3)。
4. 以上から、温湯による障害の発生程度を考慮すると、温湯灌注処理に用いることができる温 湯の最高温度は57°Cである。
5. 現地試験では、温湯53、55、57°C区とも処理前に比較して処理後の寄生程度は低下した(図 4)。また、57°C区でも障害の発生程度が小さいことから、55°Cを適温として±2°Cの範囲内 で行えばよいと判断された。
6. 処理後の寄生程度の経過から、温湯灌注処理の効果持続期間は1か月程度である。 7. 平均的な高設栽培ハウス(150坪)における本防除法の経済的評価では、温湯灌注処理にかか
るコストは薬剤散布と大差はないが、労力は薬剤散布の6倍を要する。
成果の活用面・留意点 1. 本成果はいちごに発生するシクラメンホコリダニの緊急的な防除対策として活用する。 2. 本処理法には、農薬のような浸透移行性や残効性はないことから、処理にあたってはかけむ
らがないよう行う。また、処理前に被害の著しい花梗などは取り除いて温湯がかかりやすく しておくと同時に、処理後の再寄生を起こす感染源は極力取り除いておく。
カテゴリ 病害虫 いちご コスト シクラメン 農薬 品種 防除 薬剤

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